たったひとつ〈深紅〉 ３

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お店を出て、タクシーを拾うまでのわずかな距離



誰もいない夜道を

手を繋いで歩く




差し出された手を握るのを

少しためらった私に






『腹括ったって言ってんじゃん』






優しく笑って

左手で、私の右手をしっかり包んでくれた








.









『───明日さ、事務所に呼ばれてんだよね』






通りまで歩く途中

思い出したように呟いて








「え……、」


『たぶん写真のこと怒られる。正式に。笑』








それ、は

笑い事ではないような……









『……俺、ちゃんと言うから』


「……何を？」


『会いに行った相手は、俺の大切な人です、って』








………、










「……大丈夫、なの？」


『んー、わかんない。たぶんもっと怒られる。笑』


「えええ……」








脱力すると、紫耀が声をあげて笑った










『でも俺、もう決めたから』


「………」


『認めてもらえるように頑張るよ』










そう言って、まっすぐ前を見る紫耀の顔は



お世辞でも大袈裟でもなく

本当に本当に、かっこ良かった。









『あ、そーだ』


「ん？」


『今すぐとかじゃないけど、メンバーにもちゃんと紹介すんね』


「……え、なんか緊張するね」


『そう？もう顔見知りみたいなもんじゃん』


「いやだからでしょ……」


『あ、そっか。笑』


「そうだ、廉くんにお礼言わなきゃだなぁ……」


『……そのさぁ、廉くん呼びやなんだけど』


「え？」


『永瀬さんでいーじゃん』


「急にどうしたの？笑」


『いやずっと思ってたわ！仲良くなりすぎな！』


「そんな事ないと思うけど……」









今度はぶつぶつと文句を呟く紫耀が、

なんだか可笑しかった









『……A、』


「ん、？」


『これから、いろんな事あると思うけどさ』


「………」


『一緒に生きてこーな』


「…………うん」








未来がどうなるのかなんて、誰にもわからない





でも、紫耀の声が、言葉が

繋いだ手が


優しい笑顔が





もう、きっと大丈夫だって

そんな風に言ってくれている、気がした。









『ほら、行くよ？』











優しい声がして



指を絡めるように、私の手を

ぎゅっ、と握り直す。









………これから先も、




ずっと、ずっと。









.









.









「……紫耀、」


『ん？』


「…………だいすき」


『だから、俺の方が好きだって。笑』





fin.

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