たったひとつ〈深紅〉 ３

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想いを確かめるように

岸くんがくれたペットボトルを、両手でぎゅっと握りしめる






昨日、Aの前でそうだったみたいに

剥がれ落ちるみたいに、言葉がぽろぽろ落ちていく









『………めちゃくちゃ好きなの、』


岸「……うん」


『……すっごい、大切だし』


岸「うん」


『も、……だめなんだよ俺、Aがいないと』


岸「……うん、そっか」









こうやって言葉にして言ったのは、いつ以来なのかな




岸くんは、否定しないで

ただ、頷いてくれて



不思議なくらい


自分の中で、ストンと落ちていく








出会った時からずっと、今も



俺は、Aが好きで

大好きで





この先、何がどうなろうと、それだけは

もう絶対変わんない事だって、気付かされる







Aに再会してから、間違いなく

俺の毎日に、明るい色が加わった







こんな風になっても





"もう……会ったらダメだよ？"




海人の言葉が、正しいってわかってても




もう会わない、なんて

そんなの無理だよって



心の中の俺は、叫んでた……








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岸「……そういう人って、人生で何回も出会えるもんじゃないと思うし。幸せな事だよ。悪い事じゃない」








きっぱり言い切った岸くんは

俺はまだ出会えてねーもんな〜、と笑った






"幸せな事だよ"

"悪い事じゃない"





岸くんの言葉が、心に響く












岸「そりゃあさ。周りはいろいろ言うと思うよ？でも……紫耀の人生じゃん。心にずっと引っ掛かったまんまじゃ辛いよ」



『………』

　

岸「何が正解か、それ決めんのは紫耀だよ」



『………』



岸「紫耀が正しいと思うことをすればいいよ。……それでいいと思うよ」









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───何かに懸けるとき




代わりに何かを失う事は、しょうがない事だって

どこかで思ってた





わかってもらおうともしないで

自分を守ってた







何よりも、とか

何が一番とかじゃなくて



失いたくないもの


大切なもの








"好き"




たったひとつ、その想いだけは







俺は………









.









岸「大丈夫だよ、紫耀は」









…………、









.









岸「おぉい、泣くなよ〜！笑」








大きな手が、俺の頭に乗って



くしゃっとした笑顔につられて

俺もちょっとだけ笑った









『初めて、岸くんがリーダーだなって思った……』


岸「うぉい！！！！」
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