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「酒は美容にゃ大敵ってか！？」
ヤソップは酔って赤らんだ顔でAに絡む。
彼がイーストブルーにいる妻、バンキーナ一筋であることをホンゴウは知っていたが、
それでも腹の虫は収まらなかった。
「いや、まあそんなところです。こう見えて女子なのでっ」
彼女は顔の下にいかにもキリッとしたような手のポーズをとっておどける。
「お前はどっからどー見ても女だよ」
「そうだ！この船女が少ないからよォ、紅一点ってやつか？」
「ちっこいしよ！髪とか俺らと比べて明らかにサラサラしてるんだよ！
俺なんて最近頭頂部あたりが禿げてきてんだぞ！」
「お前、てっぺん後退しすぎてワノ国の妖怪、
そうアレだ！河童にそっくりだぞ」
「ふざけんな！お前に言われたかねェ！
最近後ろ髪で隠してるけどテメェ前髪薄くなってきてんだろ！」
騒がしくまた喧嘩が始まる。
それを察知してAはスルリと組んでいた肩を離し、遠巻きから喧嘩を見守り始めた。
争いごとが起きると根は荒くれ者だからなのか、
甲板ではどっちが勝つか賭けたり、
茶々を入れたり火に油を注いだりと、
各々が楽しむのだが彼女は違かった。
喧嘩で怪我をしているクルーをみると不安そうな顔になる。
勝った方を凄いとは褒めるものの、喧嘩をした勇気や人を殴った姿の勇ましさなどは決して肯定しない。
その姿はホンゴウには好感がもてた。
海に出て最初の時は喧嘩を見る度に大笑いしていたが、
やはり仲間に怪我はして欲しくないものだ。
しかし、誰かが争ってある種海賊団の中で地位を決める指標である
「強さ」を競う行為である喧嘩は絶対に悪いことだと言い止めることはできなかった。
幹部の連中はチラホラと賭けて楽しんでいるし、
すぐに取っ組み合いを始める輩だって多くない。
何しろ頭であるシャンクスは滅多に怒らないが、
喧嘩が始まっても軽くたしなめるだけで接戦になると誰よりも盛り上がる。
しかし、怪我をしているクルーがいることより今、ホンゴウには気に触る発言があった。
それは彼女に対してのクルーの「どっからどう見ても女」という言葉だ。
それは当たり前なのだが、自分以外が彼女を「女」として見ているのが許せなかった。
それでいて肩を組んで仲良くするなんて。
しかし幹部である自分が怒りと嫉妬に身を任せて喧嘩に参加するのはいただけない、
という理性がホンゴウの体から吹き出る怒りを武力として発散させないのである。
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作者名：あみ | 作成日時：2022年10月12日 1時
