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(……っつってもなァ)
こんな大雪の中猫を探すことなんてあるか？
とホンゴウは苦笑いした。こんなところに本当に猫はいるのだろうか。
街を探すのが適当ではないか。
しかし頭は悪くは無いはずの彼女が本気で探しているのだから何か理由があるのだろう。
ないはずがない。
そう考えながらも彼は少し疑っていた。
「おーい」
申し訳程度に猫に声がけしてみるものの、
人間じゃない動物が「はーい」なんて丁寧に返事を返してくれるわけがない。
こんな所で猫を探すくらい彼女は頭が弱かったっけなァ。
さっきの様子から見るに嘘ではなさそうだし、
かといって本気で街じゃなくここで猫を探して東奔西走することなんてあるか？
あともう少し探して無理そうだったら彼女への説得を試みよう。
ホンゴウはそう思いながらも足を進める。
すると、足元の雪がボコ、と音を立てて盛り上がった。
もしや、と思いしゃがんでみるとそのもしやだった。
猫だ。きちんと鍵しっぽの白猫。
青いので恐らく彼女のいっていたロシアンブルーの目で、多分ペルシャ猫という種類だ。
とにかく彼は息を殺したが、見知らぬ人間に猫は警戒している様子だ。
本来ならば様子を見てゆっくりと距離を詰めるのが最適解なのだろうが、
今は猫の気を引く道具もおやつも持っていないし、
この豪雪の中逃げられたら二度と見つけられなくなってしまうと思い猫を捕まえた。
手を噛まれたり引っ掻かれたりして少し血がでたが、
今は保護するのが先だと彼は足早に森を抜けた。
街の方へ走る。はぁ、はぁ、と白い息が漏れた。
「……おや、お兄さんその猫は」
「知ってるのか？探してくれと知り合いが頼まれててなァ」
「おう、酒屋の隣の家の女の子の猫だ。
そういえばさっき居なくなったと大騒ぎして街中かけてたし、とにかく見つけてくれてありがとう。
俺からも礼を言うよ。その猫はきちんとその子の所へ送ってあげるからよ」
気のいいおじさんに話しかけられ、ホンゴウはとにかく猫を彼に渡した。
近くで話を聞いている人もいたし、割りと大きな声で喋っていたので
信用はできるだろうと手渡した後、傷だらけになった手を見て苦笑いした。
いつもだったらすぐに消毒するところだが、今はAの所へ行くのが先だ。
さっきは猫を逃がすまいと何も言えなかったが、きっと彼女はまだあの豪雪の中だ。
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作者名：あみ | 作成日時：2022年10月12日 1時
