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「いやモンスターにもさん付けすんのかよ！？」
そう誰かが突っ込むと、
「はい。モンスターさんも大切な幹部のひとりですから」
と真面目に答える。いや、一匹かな……と少しだけ考えてからバナナを取りに倉庫へと向かった。
俺はモンスターと同等の扱いなんだ、とホンゴウは落ち込んだ。
確かにモンスターだって戦えるし大切な仲間だ。
人間と差をつけて接することは無い。
しかし、やはりこう目の前で平等に接されると心にくるものがあった。
彼はAについでもらった酒をまた煽る。
なんだか特別美味しく感じたが、それはきっとプラシーボ効果によるものだろう。
好きな人が出来たら世界が輝く、なんていう言葉に踊らされるのは精々
少年少女か気取った作家くらいだと認識していたが、
こうも自分に効果があると小っ恥ずかしくなる。
「お待たせしました。あ、バナナの皮むきますか？」
モンスターの前にバナナをとりあえずひと房差し出すと、恭しく彼女は伺う。
「や、コイツ結構器用なんだ」
ボンクパンチは見てろよ、と誇らしげに言ってモンスターにバナナを渡す。
すると房からひとつのバナナを引きちぎり、器用にも猿の手で皮をむいていく。
そして一口。よくできた猿だと思ったのか彼女は目を見開いて控えめに拍手した。
「なァ、嬢ちゃん。他の男にばかり構われるたァな」
ベックマンは追い打ちをかけるかのようにAに接近する。
「あっ、いやすみません……」
「謝らなくていい。ただ今は俺に集中してくれないか」
渾身の口説き文句。大体の人間はこれで落ちるのだ。
このシチュエーションに嫉妬しているホンゴウですら、
(流石プレイボーイだ)と思う。
彼女は顔を真っ赤にして硬直していた。
しかし少し時間が経つとハッとしたように
「もう、あんまりからかわないでくださいよ」
と冗談めかしたような顔で言う。
いつもの、おちゃらけた顔。
それも少しだけ安心した。
本気にしてしまうでしょう、という暗に惚れていることを示すような台詞が彼女の口から出なかったのだ。
しかしきっとベックマンの口からは「別にからかってはいねぇさ」などという追随の言葉が出るだろう。
それを察知したホンゴウは絶対にそんなこと言わせてはならないと固く思った。
「おい、それより遊ばねぇか」
何を喋れば止められるのか。そう考えれば考えるほど分からなく、
彼の口を飛び出したのはそんな幼稚な言葉だった。
周りからは爆笑の声があがる。
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作者名：あみ | 作成日時：2022年10月12日 1時
