生命へ (g41) ページ24
＿
｢葵ちゃん、｣
4つ下の中川皓太くんは、童顔で背が高くて、見た目に似合わず声が低い。そして私のことを、いつまでもかわいく呼ぶ。そんな皓太が、見たこともないくらい、真剣な顔をしている。
私のことを、すきだと言う。付き合ってほしいと言う。ずっとずっと憧れていたと言う。男らしい瞳で、じっと私を見つめて、その低い声で信じられないことを言う。
｢知らない、そんなの｣
｢え、ひど｣
｢なんで、突然｣
｢…｣
ーーー葵ちゃんが、嫁に行こうとするから
驚いて、皓太を思わず見てしまう。同じくらいに、その太い腕が伸びて、身体が強い力で引き寄せられた。気付けば、皓太の腕の中で。居た堪れなくなって、もがけばもがくほど、強く抱き締められる。
なんだか、泣いてしまいそうだ。
｢…っ、やだ、離してよ｣
｢あかん｣
｢ず、るい…ずるいよ｣
｢絶対、他の男になんか渡さへん｣
｢…っ｣
痛いくらい力を込める腕が、手が、震えていた。きゅうと、胸が苦しくなって、我慢していた涙が止まらなくなった。
皓太、だめだよ、私なんかじゃ。もっと皓太のこと、サポートしてあげられる、かわいい子をすきになって。
そんな言葉が頭をよぎって、最後の力で逞しい胸板を押した。
｢だ、めだよ、｣
｢なんで？｣
｢皓太は、幼馴染で野球選手で…よく知ってるはずなのに、ずっと知らないひとみたいだった｣
｢…｣
｢私は、皓太を支えられない｣
｢…あんな、｣
｢できないよ｣
皓太とは釣り合わない、そう言おうとした唇は、大きな影に隠れた。そのまま、塞がれる。
ねえ、ひとのはなし、聞いてた？こういうこと、できないって言ってるのに。言いたい言葉は、皓太に飲み込まれていく。
キスが、男みたいだ。かわいい皓太じゃなくて、知らない男のひとのような。抵抗できないように、少し強引なはずなのに、触れた部分は優しい。
｢…ん…っ、や……！｣
｢…支えるなんて、そんなことせんでええんよ｣
｢は、ぁ…こう、た｣
｢隣で、笑っとって。俺はそれだけで、頑張ろうって思えるから｣
｢……っ｣
｢葵ちゃん、どこにも行かんといて｣
再び背中に回った腕を、振り払うことができなくて。そっと抱きしめ返すと、よっしゃ、と嬉しそうな声が聞こえて、恥ずかしくなった。
(私、結婚なんてしないよ？)
(え？)
(見合い話が来ただけ、)
(え)
＿fin
全体的にすごくすきです。
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aoi(プロフ) - りょうさん» りょうさま、こんばんは＊コメントありがとうございます。いつもあたたかいお言葉、本当にうれしいです。これからもそう言ってもらえるおはなしを、書いていけたらなあと思います！ (2019年11月7日 20時) (
レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
りょう - 更新ありがとうございます。やっぱりaoiさんの文章大好きです…きゅんきゅんしながら読み返しました。これからも楽しみに更新お待ちしてます！ (2019年11月7日 1時) (レス) id: 087b3fd508 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - りょうさん» はじめまして＊こちらこそ、もったいないお言葉ありがとうございます。これからも読みたいと思ってもらえるおはなしを、描いていければなあと思います！コメントありがとうございました＊ (2019年10月23日 21時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
りょう - はじめましてaoiさんの野球選手小説大好きで、何回も読みに来てしまっています。また新しいお話を書いてくださるのを楽しみにしています！ (2019年10月23日 16時) (レス) id: 087b3fd508 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます＊気が向いたら、おはなしを思いついたら、書きたいなあとは思っています。はっきりと言えませんが、また遊びにきてくれると嬉しいです＊ (2019年7月30日 22時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：aoi | 作成日時：2019年2月18日 23時
