シャルロッテのすべて(g36) ページ23
＿
いつまでも無邪気なひとだと思う。
いつもいつも俺は、あなたの背中ばかり見つめて、ほしいほしいと思いながら憧れて、羨ましいと見つめながら恋をしていた。
｢慎吾ちゃん！｣
夕暮れの海。浜辺の少し先を歩く彼女が、麦わら帽子を抑えて振り返った。その笑顔が、すきだ。そのいつまでも変わらない少女のような、無垢な眼差しがすきだ。何もかも持っていないから、ずっと手放せないでいる。
出会って、付き合って、もうどのくらいだろう。昔ならよく知るこのひとが、笑ったり困ったり、たまに泣いたりする姿を、目に焼き付けてきた。
｢もー葵さん、早い｣
｢慎吾ちゃんが遅いの！せっかく海に来たのに、そんなんじゃ置いていくよ｣
｢俺、海とか大嫌いなんやけど｣
｢知ってる！でもいいの！｣
(何がええんやろ、)
悪戯っ子のように、彼女が笑った。海に行きたい、と何年も言い続けてきた葵さんを、このタイミングで連れてこられてよかったと思う。
夕日に包まれて、慎吾ちゃんと呼ぶ華奢な声が、風とともに聞こえてきて、とてもきれいだ。届きそうで届かないような、いつも先に行ってしまう彼女を捕まえるために。
｢なー、葵さん｣
｢なーにー？｣
｢結婚、しよや｣
｢…え……？｣
驚いて、立ち止まった。そんなひとをかわいいと思いながら、ゆっくり近付く。
｢慎吾ちゃん、ほんとに…？｣
｢ん…｣
｢私で、いいの？｣
｢葵さんがええ｣
｢…びっくり、した｣
｢今まででいちばん、驚いた顔かも｣
｢うん、予想外｣
｢ふは、かわえ｣
｢…慎吾ちゃんが慎吾ちゃんじゃないみたい｣
｢なんやねんそれ｣
｢かわいいなんて言わないもん｣
｢…ずーっと思っとるよ｣
出会ってから、ずっと。
そう付け加えると、葵さんの頬が赤く染った。無邪気な大人の、かわいらしい表情が、たまらないくらいにはすきだ。
俺とずっと一緒にいてください
改めて、想いを伝えた。ザザっと波の音がする。まるでふたりの世界みたいで、鼓膜に何かが響いてしまいそうだ。
｢うん、慎吾ちゃんだいすき｣
よろしくお願いします
そう、蕩けてしまいそうな言葉をくれた彼女を、人目を憚らず抱きしめてしまったけれど、何もかも美しい海のせいにしてしまおうと思う。
＿fin
たまにくる、石川さん描きたい衝動。
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aoi(プロフ) - りょうさん» りょうさま、こんばんは＊コメントありがとうございます。いつもあたたかいお言葉、本当にうれしいです。これからもそう言ってもらえるおはなしを、書いていけたらなあと思います！ (2019年11月7日 20時) (
レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
りょう - 更新ありがとうございます。やっぱりaoiさんの文章大好きです…きゅんきゅんしながら読み返しました。これからも楽しみに更新お待ちしてます！ (2019年11月7日 1時) (レス) id: 087b3fd508 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - りょうさん» はじめまして＊こちらこそ、もったいないお言葉ありがとうございます。これからも読みたいと思ってもらえるおはなしを、描いていければなあと思います！コメントありがとうございました＊ (2019年10月23日 21時) (レス) id: fdd157f3df (このIDを非表示/違反報告)
りょう - はじめましてaoiさんの野球選手小説大好きで、何回も読みに来てしまっています。また新しいお話を書いてくださるのを楽しみにしています！ (2019年10月23日 16時) (レス) id: 087b3fd508 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます＊気が向いたら、おはなしを思いついたら、書きたいなあとは思っています。はっきりと言えませんが、また遊びにきてくれると嬉しいです＊ (2019年7月30日 22時) (レス) id: 3dc625fcb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：aoi | 作成日時：2019年2月18日 23時
