恋の話。【オリジナル短編集】 (ページ2)

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思わせぶりページ2

幼馴染みの話
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『涼太、おはよう』
「おう」

朝、玄関を開けると、ほぼ同時に涼太が出てくる。
彼は私の幼馴染みで、私の初恋の人。
今も変わらない、私の片思い相手の人。
少し早いこの時間に家を出るのも運動部の彼に合わせるため。

進学するにつれ、一緒にいる時間は短くなっていった。私は幼馴染みの立場を言い訳に、朝の時間だけは彼を独り占めしている。

「そーやって俺にひっついてるからいつまでも独り身なんだよ」
『涼太だってそうでしょ』

涼太は、モテない訳では無い。すごく、という訳では無いけれど、後輩や、同級生からちらほらと人気がある。
それが何とも気に入らなくて。
私も、彼女らのように想いを口にできたなら。
そう思いながら、この関係が崩れるのが怖くて、何も出来ないでいた。
しかし、一つだけ幸いなのは、涼太が告白を断ること。

断った。

その一言を聞く度に、毎回安堵するのだ。

『涼太はさ、彼女作らないの？』
「んー」

また、生返事
この手の話は何回かあった。私にも、彼にも。
今まで1回も、はっきりした答えは返ってこずに。

「俺が彼女作ったらお前1人になっちゃうじゃん」

なにそれ

と笑った

淡い期待を抱くのは、これで何回目だろう。
私のことが好きだから、彼女を作らなくて。涼太も私と同じ気持ちで。

なんて。

「Aは？」
『涼太がいるからね』

なにそれ
と涼太は笑った。

お返し、ってことで、冗談みたいな会話に、こっそりと気持ちを乗せる。
こんな臆病な手しか、私には使えないのだ。
なんてもどかしい。

「俺、Aがいればそれでいいよ」

『え、…？』

涼太はそう言って、そのまま歩く。
驚いて立ち止まった私は、耳を疑った。
まるで、愛を囁くような
優しい声で

また冗談かも。
でも、

先を行く涼太の耳が、少し赤く見えたから

「Aー、置いてくぞー」
『ま、まって！』

今回はほんとに、期待していいかもしれない。