開幕 2 ページ12
「おいおい、他はまぁ理解できるがよ。4番目のルールに疑問があるんだが」
人魚が海へ行く前に、ハウワードさんが人魚を呼び止める。多分、僕達全員が抱いている疑問を聞くのだろう。
「そぉですねぇ。何故ゲームマスターの指示に従わないといけないのですか？勝利したら、後は自由なのでは？」
ナナシさんも続いて質問を投げかける。だが、人魚の返答は、至極当然なのだが、納得の出来ない答えだった。
「それが決められた事だからです」
その人魚は、海水に触れた途端、何処かに行ってしまった。泳いだ、という表現はきっと間違いなのだろう。その人魚は本当に消えたのだから。
そこから、少し時間が経った。僕の足はいつまでたっても動かなかった。これから戦争が起こるなんて考えられないから。覚悟はしていたはずだった。だが、何故か足が竦んでしまった。
最初に動いたのは、キクリコさんだった。何も言わず、砂浜を進み、すぐそこにある茂みの中に消えていった。
それにつられて、キーラさん。ハウワードさん。ナナシさん。が別々な方向に進み散っていった
ここに残っているのは、僕と季麗さん、クロさんの3人だけとなった。
「…2人は、どうやって聖杯戦争に参加したんだ？」
突然、クロさんが質問した。質問の内容はとても簡単で、直ぐに答えられるが、何故か息が詰まってしまった。
「いや、おかしな質問だった、忘れてくれ」
「いえ、おかしくなどありませんわ。でも、それは内緒にしておきましょう。知られたくないこともあるのです」
そう言い残して、季麗さんは山岳方面へと向かって行った。ふとクロさんの方を見ると、クロさんは、僕の顔を見ながら笑っていた。
「ジーベン。俺は遊びでこの戦争に参加しているわけじゃない。手加減などできないからな」
「わ、分かってますよ！強引だったとはいえ、僕だって強くなる為にこの聖杯戦争に参加したんだ！だから絶対にこの戦争に勝ってみせる！」
僕がそう言うと、クロさんは、茂みの方に歩いて行きながら、ポケットに入っていた銃を僕の方に投げ、そのまま茂みの中へと消えて行った。
何故これを渡してくれたのかは分からない。理由を教えてくれなかったし、聞ける雰囲気でも無かったが、僕はこれがとても恐ろしいようで、とても暖かい感じがした。
「…僕も行こう。1人は怖いけど、必ず勝つんだ」
僕も、指示された場所に向かって歩きだした。この聖杯戦争に勝つ為に。僕という何の力も持たない子どもが力を得る為に。
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作者名：名無し74519号 | 作成日時：2019年9月28日 20時
