First Love (ページ10)

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あっという間に約束の日はやって来た。

いつもは目覚ましが大音量で響き渡ってもなかなか起き上がれない朝も
今日はなぜだか鳴る前にぱっちりと目が覚めた。

それなのに時間に余裕がないのは、いつもより倍は身支度に時間がかかっているからだろう。

『…あぁもう…』

うまくいかない前髪と格闘し続けて早30分。

やっと気がすむ形になる頃には約束の10分前になっていた。

急いでヘアアイロンの電源を切って鞄を持ち、部屋の玄関を出る。

…変じゃないよね…？

エレベーターの窓に映る自分を見て、深呼吸。

エントランスを出ると、ちょうど目の前に止まる車。

紫耀
ナイスタイミング

窓ガラスが開いて、サングラスをかけた紫耀が顔を覗かせる。

一瞬、フリーズする思考。

…いや、

いやいやいやいや…

ちょっとこれは…

…あまりにも画になりすぎでは。

彼の手招きが私を助手席に呼び寄せる。

紫耀
よし、じゃ出発！

私がシートベルトをしたことを確認すると、紫耀は車を発進させた。

『紫耀、今日お仕事は？』

紫耀
今日はオフ

…貴重なオフだろうに。

私との時間に使わせてしまっていいのだろうか。

ふと浮かんだ不安は、紫耀の言葉に遮られた。

紫耀
Aは？

『え？』

紫耀
今日何も予定なかった？

今更だけど、と、笑いながら慣れた手つきでハンドルを回す。

『うん、私は特になにも』

紫耀
そっか、ならよかった

『今日どうしたの？』

紫耀
んー？

『なんで誘ってくれたのかなって』

紫耀
久しぶりにAと出かけたいなーと思って

想像してなかったほどシンプルな理由に、

『そうなんだ』

呆気にとられた。

紫耀
久々に買い物したくてさ、でも俺って1人じゃ買い物行けないじゃん？

『え、まだ行けないの！？』

紫耀
多分俺、永遠に1人で行けないと思うわ

『なにそれ』

紫耀
めっちゃ笑うじゃん

『だって面白いんだもん』

紫耀の変わってないとこ、また１つ見つけた。