First Love (ページ6)

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『はぁあああああ…』

薄暗くなった空に大きなため息を吐いた。

数時間前にはアイドルの登場で叫び声が飛び交っていた校舎も、今は嘘みたいに静かで。

なんだか今日は頭がごちゃごちゃで、
つい数時間前のことなのに遠い昔のことのように思える。

まさか紫耀がアイドルとして芸能界デビューしていたなんて。

昨日の私は想像もしていなかった。

てっきりダンスの先生になるとばかり思っていたのに、人生って分からないものだ。

そんなことを考えながら1人帰路を歩く。

だけど…

ふと、立ち止まって空を見上げる。

とっくに太陽は沈んで、一番星が見えた。

『…遠くなっちゃったなぁ』

いや。

『そんなの今更か…』

もうとっくに、
私が何も言わず引っ越したあの時から、
私達は遠くなっていた。

私だけ、何も変わっていない。
あの時のまま、忘れられないまま。

もう会うことなんてないのに。

？
独り言が多いのは相変わらずだな

『…！？』

背後から聞こえる笑い声に、私は思わず振り向いた。

『…え』

サングラスをかけた男性が学校の門に寄りかかって笑っているのが視界に映る。

その男性はつかつかと私の元へ近づいてきて…

サングラスを外す姿がスローモーションのように見えた。

『…っ！！』

綺麗な目に小さな顔
少し厚めの唇にさらっさらの髪の毛

目の前にして言葉が出なかった。

紫耀
久しぶり、A

A。

そう呼ばれたのはいつぶりだろうか。

あの頃より低い声だけど、懐かしくて懐かしくて堪らない。

『…紫耀？』

紫耀
ははっ、びっくりしすぎ

掠れたハスキーな声。

少し高めの笑い声。

くしゃっと笑う顔。

あぁ、紫耀だ…

やっと会えた。

…覚えててくれた。

『…ふ…っ』

目が熱くなって、気がついたら泣いていた。

紫耀
えっ、ちょ、なんで泣くの！

『うっう…うぅ～…』

言いたいこととか聞きたいこととか
たくさんたくさんあったけど、
なんの涙か分からない涙が勝手に溢れてきて止まらない。

紫耀
なんかこれ周りから見たら俺が泣かせたみたい…

困り笑いを浮かべる紫耀を見て、余計に涙がこぼれた。