可愛がられるあの子は劇場スタッフ。③ (ページ3)

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河井「なんか誰かが言ってたなー」

電話越しに聞こえる声は、特に普段と変わりない。

河井「ま、なんともないやろうけど、ﾘﾘｰと二人っていうのはちょっと避けた方がいいかもな」

『ですよね…』

河井「あんまり酷いようやったら最終手段に出るしかないな」

『え、なんですかそれ』

河井「秘密」

『ええ！！』

たまにこうやって秘密にしてくるのなに？

河井「それにしてもこんな日も残って仕事やらなあかんとか大変やな」

『こんな日もって…別にいつもと変わらないですけど…？』

河井「帰りにデザートでも買って帰るから頑張ってな」

『あ、はい、ありがとうございます』

河井「ほんなら切るわ」

そう告げて切れた電話。

………なんか会話がうまく成り立ってなかった気がする…。

それに残業の話なんで知ってるんやろ…言った記憶がないぞ…。

『………誰情報…？』

なんてことがあったのが今日の午後。

すっかり日は落ちて、帰り道は暗い。
今日は他のスタッフも早いうちに帰ったし、
残った数人で後片付け大変だった…。

大変な日に限って一人で倉庫作業だもんな…。

『お腹すいた……今日ゆずるくんいないし、ｺﾝﾋﾞﾆで済ますか………え、あれ…？』

光に照らされたｺﾝﾋﾞﾆの入り口に、
並んで歩く男女の後ろ姿。

………あれ、間違いなく…ゆずるくん…

あー、女芸人さんかな…
仲良い後輩さん沢山いらっしゃるし！

…………でも心なしか、安藤さんに見えないこともない。

ﾘﾘｰ「A？」

『え、ﾘﾘｰさん？…何してるんですか、こんなとこで』

ﾘﾘｰ「それはこっちのセリフやねんけど。」

『今日河井さんがいないのでｺﾝﾋﾞﾆに夜ご飯買いに…』

ﾘﾘｰ「は？なんでわざわざｺﾝﾋﾞﾆなん」

『え、わざわざって…別に家すぐそこですし…そんな変なことではないと思うんですけど』

ﾘﾘｰ「来られへんって聞いてたけど、開始時間まだやし来れんねやったら飲み会来たらええやん」

『え？飲み会ですか…？どなたが来られるんですか？』

ﾘﾘｰ「ちょっと待って、なんも知らんの？」

『河井さんも飲み会って言ってたから、それにﾘﾘｰさんも行かれる感じですか？』

ﾘﾘｰ「………」

眉間に皺を寄せて何か言いたげなﾘﾘｰさん。

でもゆずるくんからも誘われなかったし、
まあ、芸人さんだけで話したいこともあるだろうし。

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