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【 yuzuru.side 】
いつも通り劇場に着くと、なにやら楽屋近くが騒がしい。
河井「なに、誰か来てんの」
入り口で騒ぐ後輩に声をかけてみた。
「おはようございます！なんか、めちゃくちゃ可愛い子が楽屋で寝てまして…」
「稲田さんの知り合いみたいなんですけど…」
河井「へぇ」
稲田の知り合い、ね。
ついにあいつに彼女でもできたんか？
いや、それにしても、楽屋になんか連れてこんか。
河井「はよ。お前の知り合い来てんねんて？」
稲田「おはようございます〜。それで言うたら河井さんの知り合いでもありますけど」
河井「はあ？」
稲田「疲れたみたいでぐっすり寝てますよ、Aちゃん」
………え、今こいつなんて言うた？
Aちゃんって言うた…？
河井「は、え、なに、誰って？」
稲田「だから、Aちゃんですって。あっちで寝てますよ」
稲田が指を刺した方に目をやれば、確かに机に突っ伏して寝てるのは、紛れもなく、A。
………待て、ここ東京やんな？
稲田「仕事でーって言ってましたけど」
当分会われへんって思ってたから、顔にやけてまうほど、嬉しい。
近づいてみてもぐっすり眠ってて、起きそうにない。
河井「A、…こんなとこで寝てたら風邪ひくで」
『……ん、…』
河井「ほら、はよ起き」
『…んー、稲田さん〜河井さん来ましたあ？』
しっかり、河井さん呼びされたことに少しショックを受けながら、まだ寝ぼけているAの耳元に口を近づけた。
河井「ゆずるくんって呼んでくれへんの？」
Aにだけ聞こえるボリュームでそう言うと、ピタリと動きを止めた。
それを見て思わず笑いそうになる。
稲田「隣におるやん」
ばっちり目があったと思ったら、これでもかと言うほど目を見開いて、口をパクパクとさせてる。
河井「おはよ」
『な、い、稲田さん！来たら起こしてくれるって言ってたじゃないですか！』
稲田「起こそう思ったら河井さんが先に起こしに行ったから」
俺とAの関係を知らない周りの芸人たちが不思議そうにこちらの様子伺いながら、ひそひそと話をしているのが聞こえる。
………俺の彼女やって、言えたらなあ。
でも、Aが嫌がるの目に見えてるし、さすがにせんけど。
河井「…で、どうしたん」
『あー、まあ、それは…まあ…』
河井「………おっけ、出番終わったら時間あるから、また連絡するわ」
『はい！』
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作者名：KaZu | 作成日時：2022年1月4日 23時
