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lily.side
『今日はありがとうございました。お陰様ですっきりしたような気がします』
ﾘﾘｰ「おう」
見送ってスマホを取り出す。
ﾘﾘｰ「お疲れ様です」
河井「おう、大丈夫か？」
ﾘﾘｰ「特に何もないですけど、」
河井「けど、なんや」
ﾘﾘｰ「……ゆず兄と話したいんですけど、いいっすか」
この後少し時間があるらしく劇場近くのカフェで待ち合わせ。
河井「遅なって悪い」
ﾘﾘｰ「全然大丈夫っす」
河井「で、話って？」
ﾘﾘｰ「……Aのことなんすけど、」
ほんまは俺もAのことは昔から好きやった。
いや、今も好きなんやけど。
俺は悪い人間やから、Aが弱ってるの見て今やって思ってた。
でもなあ……
ﾘﾘｰ「……やっぱりゆず兄しか無理っすわ」
河井「は？」
ﾘﾘｰ「いやー実は俺もAのこと狙ってたんすけど、」
河井「いや、なんなん」
Aのあの顔…あんな顔させられるのはゆず兄しかおらん。
俺には到底無理や…。
ﾘﾘｰ「めちゃくちゃ悔しいっすけど、助けられるのはゆず兄しかおらんっすわ」
河井「さっきから何の話してんねん」
ﾘﾘｰ「え、まだばれてないと思ってます？」
ゆず兄がAのこと好きなことくらい、
誰がどう見てもわかる。
ﾘﾘｰ「Aのこと好きでしょ」
河井「は、はあ！？」
ﾘﾘｰ「いや、誰がどう見てもわかりますよ」
河井「まって。仮にそうやとして、それとこれとどう関係があんねん」
ﾘﾘｰ「そんなん決まってるでしょ。Aに気持ちを伝えるだけですって」
河井「はあ？」
ﾘﾘｰ「ほんなら多分全てうまくいきます」
ゆず兄がちゃんと気持ち伝えれば、
思ってること、ちゃんと伝えれば、
Aはそれに応えてくれるはず。
河井「………ちょっと言ってることようわからんわ」
ﾘﾘｰ「逃げんとってくださいよ」
河井「いやだから、」
ﾘﾘｰ「ゆず兄は、Aの命の恩人なんです」
この人がおらんかったら、
劇場においでって誘ってなかったら、
この気持ちは知らんままやった。
ﾘﾘｰ「ゆず兄のこと、素敵な人やって、今まで見たことない表情で言ったんです、あいつ」
河井「……」
ﾘﾘｰ「だから、ゆず兄にしかできないんです。……Aが頼れるのも、Aを助けることができるのも、ゆず兄しかいないっす」
河井「……わかった」
ﾘﾘｰ「……」
河井「………ありがとう」
あー、さらば、俺の恋心…。
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作者名：KaZu | 作成日時：2021年4月26日 23時
