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ﾘﾘｰ「…でもさー、なんで前の仕事やめようと思ったん？」
『あー、それは……河井さんのおかげです』
ﾘﾘｰ「え？その頃からの知り合いなん？」
『いえ！そうではなくて、……初めて会った時はアインシュタインの河井さんってことも知らなくて…』
ﾘﾘｰ「なんやおもろそうやん」
『全然面白くないですよ？』
あの日は確か、まだ以前の会社で勤めていた時で、
会社は休みの日だったけど、いつものように家に持ち帰って仕事。
なんとなく外に出て気分転換したいなって思って。
『外に出たら暑くて。なんか飲みたくなってｼﾞｭｰｽ買ったんですけど、たまたまその自販機が当たり付きのやつで、しかも当たりが出たんですよ。それまで良いこともなくて嬉しくて舞い上がって焦ってﾎﾞﾀﾝ押したらまさかのｺｰﾋｰで』
ﾘﾘｰ「飲まれへんのに？」
『そうなんです。馬鹿ですよね〜』
ﾘﾘｰ「で？」
『どうしよかなーって思いながら歩いてたらめちゃくちゃ項垂れてる男の人がベンチに座ってて。それが河井さんでした。もうこの世の終わりみたいな顔してて、ほんとに！でもたぶん私も負けないくらいやばい顔してたんですけど…』
ﾘﾘｰ「話しかけたん？」
『はい。コーヒーあげました。多分その時、私の顔見てこいつもやばいっておもったんでしょうね。劇場に行ってみーって言ってくださって。まあでも、そのあともなんだかんだ行く時間もなくずるずると月日は経ったんですけど、ある日ついに体が言うこと聞かなくなって、初めて無断欠勤したんです。出勤時間過ぎたのをベッドの上で確認したら一気に体が軽くなって。』
ﾘﾘｰ「で、劇場に行ってみた？」
『行ってみて、舞台上でお仕事してらっしゃる方々を見ながら笑って、来てよかったなーって思ってたら、アインシュタインさんが出てきたんです。その時初めて、河井さんが芸人さんだって認識しました』
あの時は驚いたのと同時に、めちゃくちゃ楽しそうに漫才してる姿見て安心したのを覚えてる。
『めちゃくちゃきらきら輝いて見えて、一瞬でファンになりました！』
………ほんまに輝いて見えて、ずっと見ていたくて、
この人の力になれる仕事がしたいって思ったんだよな。
ﾘﾘｰ「……そっか。」
『………ほんまに、…私が良くしてもらうのは、もったいないくらい、素敵な人で…』
ﾘﾘｰ「……」
『だから、今回のことでも、余計な心配とか、迷惑かけたくないんです』
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作者名：KaZu | 作成日時：2021年4月26日 23時
