家族ごっこ始めました 6【不死川実弥】

あの場所へ ページ21

数日後。

この日は朝早くから出掛ける準備に終われていた。

朝餉の準備をしながら、まだ眠そうな陽翔と陽葵を起こして着替えさせる。


「これ、着るの久しぶりだぁー」

自分の服装を見て陽翔がくるりと回る。

今着せている服はこの子たちと初めて会った時に着ていたものだ。


「きょうどこか行くの？」

首を傾げる陽葵に頷く。


「お出掛けするよ。ご飯もうすぐ炊けるから、それまでに持って行きたいもの準備しておいてね」


綺麗に束ねた陽葵の髪に、この前買ったお揃いの髪留めをつける。

「はーい」と元気よく返事した二人がばたばたと寝室から居間方へ駆けていく。


「おようふくがこれだから、久しぶりにこれもっていくんだ！」

と、玩具をしまってある押し入れから、始めて会った時に身に付けていた鞄を取り出している。

それを見て台所に向かえば、実弥さんが魚を焼いてくれているところだった。

私に気が付いて話しかけてくる。


「A、こっちのはもう焼けてんぞォ」

「ありがとうございます」

「飯もそろそろなんじゃねェか？」

「あ、じゃあ、お味噌汁もう注いじゃいますね」


お玉を手にして人数分を均等に分ける。

こうして台所に二人で立つのは久しぶりで。
なんだか本当に夫婦みたいだなぁなんて思ってしまう。

そうこうしているうちにお米も炊けたようだ。

茶碗に装いで、余った分は桶に入れて冷ます。

朝餉を食べ終わったらこれで握り飯を作る予定だから、今日は沢山炊いていた。


「実弥さん、本当に行くんですよね？」

私は念を押して確認する。

いよいよ今日は陽翔と陽葵に初めて出会ったあの場所に行くからだ。


「あァ。心配しなくても、あそこは結構良いところらしいぞォ。あの時は夜だったから分かりにくかったが、旅行客も多いらしい」

「それは、知ってますけど………」

何せ私は初めて二人に会った時、彼らを家族旅行中に親とはぐれた子どもだと思っていたからだ。

私がお盆にご飯を載せていると実弥さんの手が私の手に重ねられた。

驚いて彼を見ると、真剣な目で口を開く。


「大丈夫だァ。もしも二人が嫌そうにしてたらすぐ帰る」


暖かい手の温もりに私は「………はい」と小さく頷いた。

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