家族ごっこ始めました 6【不死川実弥】

似合う ページ20

お店に入れば、目移りしてしまう程沢山の商品が並んでいた。


「ひなちゃんお花がいいなぁ」

陽葵の要望に花柄の細工が入った物を中心に簪や髪留めを見ていく。

これはどう？と言いながら陽葵に合わせてみる。


「うーん」と真剣に悩む姿が可愛らしい。


陽葵が簪を一つ取って、じぃっと見つめている。

なんだかにらめっこみたい。と微笑ましく思っていると、簪と私を交互に眺め始めた。


「それが気に入ったの？」

「ううん。でもAに、とってもにあうね」

「え？」

付けてみて。と言いたげににこにこして「はい！」と陽葵が私に渡してくる。

淡い桃色の装飾が付いた花柄簪だった。


そっと結んでいた髪をまとめて試しに差してみる。


「かわい〜っ！」と自分のことみたいに喜ぶ陽葵に少し照れながら「ありがとう」微笑む。


「似合ってる」

横から声がして振り向くと、実弥さんが私を見つめていた。

彼からの不意打ちの言葉にどきっと胸が鳴る。


「っ、あ、ありがとうございます…」

顔が熱くなるのを感じて、さっと視線をそらす。


自分が今どんな顔をしているのか、何となく想像が付いて彼を直視できなかった。


やばい。

私、実弥さんにどんどん惹かれている。


「Aはそれ買うの？」

陽翔がくいっと私の着物の袖を引いた。


「えっ？………そうだなぁ」

陽葵も実弥さんも似合っていると言ってくれた。

私自身、見た目も色合いも好みだ。

欲しくないと言うと嘘になる。


「陽葵とお揃いにしたいし、もう少し考えてみるね」

簪をもとに戻して、暫く他の商品を見ていると「ちょうちょだぁ〜」と陽葵が目を輝かせる。


それは花と蝶が細工された髪留めだった。


「しのぶやカナヲみたーい」

「そうだね」

「これならきよちゃんたちともお揃いだね！」


嬉しそうな陽葵の声。

とても気に入ったみたいだったので、私たちはその髪留めを揃って購入した。

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