子守 ページ39
「ねずこ苦しそう………」
「おじちゃん、ねずこだいじょうぶ?」
とある一室。
鱗滝は小さな手に袖を引っ張られていた。
鬼の禰豆子が苦しそうに床に入っている姿を見て、稀血の兄妹である陽翔と陽葵が不安げに尋ねてくる。
御館様に協力していた珠世という鬼が寄越した“鬼を人間に戻す薬”を言われた通り使った。
すると、禰豆子が段々汗をかいて苦しんでいったのだ。
禰豆子が人間に戻れば、無惨の太陽を克服するという目論見は潰える。
千年以上かけて無惨が探し続けて来た、完全体の夢は振り出しに戻るのだ。
日光で消滅しない鬼は、この長い年月で禰豆子一人だけ。
どくんどくんと、心臓が音を立てる。
すぅ、はぁと深く息を吸って吐いた。
“最終局面”という言葉が何度も頭を過る。
「おじちゃんも苦しい?」
陽翔が心配そうに覗き込んでくる。
「大丈夫だ」
ぽんっと頭を撫でてやる。
風柱とその継子が面倒を見ていたというこの稀血の兄妹は、禰豆子と共にこの部屋へやって来た。
蝶屋敷に預けられていたそうで、本来は日が沈む頃に迎えが来る筈だったらしい。
しかし、何かを察知した風柱によって、暫くそのまま預けると鴉から伝言があったようだ。
ここに来る前、陽葵はそれはそれは酷く泣いていたという。
だが、禰豆子がよしよしと頭を撫でて落ち着かせたそうだ。
「ねぇ、おじちゃん。おじちゃんはAとさねみがいつむかえにきてくれるか知ってる?」
陽葵の大きな目が沢山の水分を蓄えてゆらゆら揺れている。
顔に“寂しい”、“心細い”と書かれていた。
二人の事情はある程度聞かされている。
親とはぐれたところを鬼に襲われ、その時にふたりを助けたのが今の風柱とその継子だという。
そんな経緯があってか、兄妹は二人に懐いたそうだ。
家族からはぐれてその上、信頼を寄せている二人からも離れた今、見知らぬ誰かと狭い部屋に押し込まれては不安になるのも無理はない。
ぐすっと鼻を啜り始めた陽葵に慌てる。
一時期、禰豆子を預かっていた時とは訳が違う。
わしは子守りをするために来た訳ではないんだが………
とは言え、稀血の兄妹も禰豆子と同様に狙われている可能がある。
だからこうして禰豆子と共に幾つかある産屋敷の隠された屋敷に身を隠しているのだ。
「日が昇る頃になれば分かる。だから、今はゆっくり休め。子どもはとっくに眠る時間だ」
告げると禰豆子の隣に並べた布団に子どもたちを押し込んだ。
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月見(プロフ) - 澪凪さん» 嬉しいコメントありがとうございます!お待たせしてばかりですが、更新頑張りますね!最後までどうぞお付き合い下さい(*^^*) (2021年7月29日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - やばいです好きぃぃぃぃぃぃぃっ!!頑張ってください、めっちゃ楽しみにしてます! (2021年7月29日 9時) (レス) id: 279a2ef6a9 (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます!おっしゃる通り、すれ違いつつもこの辺りから少しずつ二人の距離が縮んでいく予定です(*^^*)のんびり更新ですが精一杯頑張るので、最後までよろしくお願いします! (2021年7月6日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん(プロフ) - めっっっちゃめちゃ面白いですね…実弥さんと夢主さんがすれ違いながらも徐々に近付いていく感じがね!もう、ね!(*´・v・`)いつも更新、本当にお疲れ様です。これからも楽しみにしております!! (2021年7月6日 10時) (レス) id: b998dfb0fd (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 衣世さん» コメントありがとうございます!小説版読んでいた時に、実弥さんとカナエさん…そうなのかな?と思ったので、「2」で一瞬カナエさんのこと書きましたが、ファンブックで確定したときは驚きました(*_*)まだその辺の下書きがとっ散らかっていますが、更新頑張りますね(^^) (2021年6月18日 17時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年6月18日 5時