家族ごっこ始めました 5【不死川実弥】

どこもかしこも ページ34

「いたたた………」


先ほどより幾分かマシになった痛み。

きょろきょろと辺りを見回すと、ずらりと四方八方に襖が並んでいた。

ここは、どこかの部屋みたい。


兎に角、誰かと合流しないと………


そこまで考えたとき、背筋がぞっとして、一瞬息が止まる。

急にここへ来て、突然の危機回避と痛みとで頭がいっぱいだった。

少し冷静になった途端、そこかしこから鬼の気配がしていることに気が付いた。


どうして今まで気が付かなかったんだろう。


私が素早く立ち上がると同時に襖を破るようにして、全ての襖から鬼がなだれ込んできた。


「っ！…風の呼吸 陸ノ型 黒風烟嵐」


下から上に刀を振り上げて目の前に迫っていた鬼に斬激を与える。

ボロッと体が崩れたのを横目に振り返り様に次の技を放った。


「参ノ型 晴嵐風樹」


どこもかしこも鬼、鬼、鬼………。

鬼だらけ。


ぐっと足に力を入れて一気に踏み込む。


「捌ノ型 初烈風斬り」


視界の隅に見えていた襖の奥の廊下目掛けて技を放つと、鬼を倒しながら進路を切り開く。

多数の鬼を相手にしているため、勢いはある程度落ちたけれど、狙い通り廊下に出ることが出来た。

廊下へ飛び出した勢いのまま、壁に足を掛けて身体を浮かせる。


「ふっ！」

力強く壁を蹴って、振り返り様に刀を振る。


「風の呼吸 漆ノ型 勁風・天狗風」


細かい塵旋風の如く、斬撃を放てば大半の鬼の手足が落ちた。

それまでは数で利を得ていた一部の鬼たちの動きが鈍って、鬼側に隙が生まれる。

少し余裕が出来た私は移動しながら近場の鬼の首からはねていく。


あれほど痛く感じていた体の痛みのことなんて忘れて、必死に腕を振るった。

大技を放った後に立て続けに呼吸で技を連発したけれど、不思議と頭の中は冷静で腕も軽い。

次から次へと襲ってくる鬼も捌けている。


これはやっぱり柱稽古のお陰だ。

前までの私と比べると成長している。


このまま移動しながら、誰かと合流出来れば………


そんな思いで廊下を進んでいく。


「待てぇ！！」と、後ろから追いかけてくる鬼に注意しつつ、前方の鬼を片付ける。

すると、前方に部屋が見えたかと思うと、一際騒がしくなった。

次の瞬間、ドンッ！！と少し先の襖が左から右へ鬼と共にふっ飛んで行く。


誰かが戦っている！


そう思った次の瞬間、襖があった場所から見覚えのある姿が飛び出してきた。

背中越し→←落下

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