滝修行 ページ3
稽古三日目。
まだ二時間の滝修行を達成できていない私。
今日はそれに耐える前に限界が来た。
震えが止まらなくて念仏を唱える余裕がなくなると寒さから、ただ歯をガチガチ鳴らすことしか出来なくなっていた。
気を失いかけたとき、幸運にもこれから滝に打たれようとしていたカナヲちゃんに助け出されたのだ。
「あ、ああありがっ、とっ、…………」
がたがたと震えて「………くしゅんっ!」とくしゃみをする私を見て、川の水の冷たさで青い顔を更に青くさせてあわあわするカナヲちゃん。
川から上がると側の大きな岩にすがり付く。
暖かい………
太陽の光に当てられた岩がこんなにも暖かい事を初めて知った。
「Aさん……っ」
不安そうにおろおろする彼女に笑い掛ける。
「も、もう、大、丈夫。カナヲちゃん、滝、修行、頑張って」
「でもっ…」と狼狽えるその後ろから大きな影が現れる。
「南無。後は私が付いている………」
大きな体の岩柱様の登場に驚いたカナヲちゃん。
ペコリと頭を下げると、稽古へと戻っていった。
「これを………」と差し出されたタオルを受け取る。
岩柱様に気遣われるとは……と、恐縮しながら受け取った。
「…ありがとうございます」
岩柱様の稽古はこれまでとは違って、走ったり打ち込みをしたりと、激しく動く内容ではない。
内容自体は複雑じゃないのに、中々達成できない。
こんなに辛いなんて………と思っていると、思いがけない言葉をかけられる。
「不死川と喧嘩でもしたか?」
「え…?」
「ここの三日間、以前会った時と比べて覇気がないように感じた」
言われてとても驚いたけれど、岩柱様は目が見えない分そういうものを感じ取ることが得意なのかもしれないと納得した。
「………そんなことまで分かるんですね…」
「その返事は何かあったのだな」
苦笑いしながら呟くと確信を得た言葉が返って来た。
「別に喧嘩はしていませんよ。ただ、私が勝手に落ち込んでいるだけです」
そう伝えると岩柱様は少し考えたあと口を開いた。
「噂話でも聞いたか?だが、昔のことを気にしているのならもう終わったこと。A、不死川にはお前が必要だと思っている。………不死川を頼む」
岩柱様は何て勘が鋭いお方なのだろう。
けれど私は終わったこと。として割り切れないからこうして悩んでいるのだ。
だから笑顔を作って答える。
「……勿論です。私は風柱の継子、ですから」
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月見(プロフ) - 澪凪さん» 嬉しいコメントありがとうございます!お待たせしてばかりですが、更新頑張りますね!最後までどうぞお付き合い下さい(*^^*) (2021年7月29日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - やばいです好きぃぃぃぃぃぃぃっ!!頑張ってください、めっちゃ楽しみにしてます! (2021年7月29日 9時) (レス) id: 279a2ef6a9 (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます!おっしゃる通り、すれ違いつつもこの辺りから少しずつ二人の距離が縮んでいく予定です(*^^*)のんびり更新ですが精一杯頑張るので、最後までよろしくお願いします! (2021年7月6日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん(プロフ) - めっっっちゃめちゃ面白いですね…実弥さんと夢主さんがすれ違いながらも徐々に近付いていく感じがね!もう、ね!(*´・v・`)いつも更新、本当にお疲れ様です。これからも楽しみにしております!! (2021年7月6日 10時) (レス) id: b998dfb0fd (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 衣世さん» コメントありがとうございます!小説版読んでいた時に、実弥さんとカナエさん…そうなのかな?と思ったので、「2」で一瞬カナエさんのこと書きましたが、ファンブックで確定したときは驚きました(*_*)まだその辺の下書きがとっ散らかっていますが、更新頑張りますね(^^) (2021年6月18日 17時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年6月18日 5時