はぐらかし ページ17
酸欠で力が入らない私を実弥さんは自身の胸元に凭れ掛けさせた。
「………言っとくが、信頼してねぇ奴のことは継子にしねェ」
肩で息をする私の耳元にどくん、どくんと実弥さんの心臓の音が響いてくる。
「前にも似たようなこと言ったが、それなら最初から弟子にしてねェ。この屋敷に長く置いてるのは、………そう言うことだァ」
「っ…!」
つまり、実弥さんは私の事を信頼してくれているの?
「………だったら、どうして痣のこと、…教えてくれなかったんですか………」
まだ乱れた息のまま顔を上げて彼を見た。
きっと息を切らしている今の私は顔が真っ赤に違いない。
実弥さんは何時ものように涼しい顔をしているのかと思っていたけれど、その頬がほんのり色付いていて、あまり見ることの無い姿にどきっとした。
すると、体が傾く。
気が付けば、視界には実弥さんの顔と天井が見えていた。
少しして自分の背中が布団の上にあって、寝かされていることに気が付く。
「A、隙だらけだなァ………」
「………っ、はぐらかさないで、答えてください」
フッと笑うような声に頬を膨らませると「はぁーーーっ」と深いため息が降ってくる。
「そんなこと聞いてる場合かァ?………男はなに考えてるかわかんねェって、前に教えただろォ」
「え…………?」
言われて、まだ陽翔たちと会って暫く経った頃のことを思い出す。
あの時の私は、確か実弥さんにからかわれて押し倒されたんだ。
元々熱くなっていた頬が更に熱くなる。
自分の置かれている状況を理解して、反射的に胸元の合わせを握る。
その手が震えていることに初めて気が付いた。
すると、彼が私の手首を掴む。
「っ!………さ、実弥さんっ!?…あ、あああ、あのっ………!!」
実弥さんのことは好きだ。
でも!
でもっ!!
両思いじゃない人と、なんて………
嫌だ。
ぎゅっと目を瞑る。
「ンな、怯えなくても何もしねェよ………」
そんな言葉と共にそっと頭を撫でられた。
「やっぱり、俺はもうAのこと突き放しきれねぇみてェだわ……。怖がらせて悪かったなァ…」
「………?」
謝罪の言葉に恐る恐る目を開く。
そこには優しい表情で私を見つめる実弥さんがいた。
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月見(プロフ) - 澪凪さん» 嬉しいコメントありがとうございます!お待たせしてばかりですが、更新頑張りますね!最後までどうぞお付き合い下さい(*^^*) (2021年7月29日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - やばいです好きぃぃぃぃぃぃぃっ!!頑張ってください、めっちゃ楽しみにしてます! (2021年7月29日 9時) (レス) id: 279a2ef6a9 (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます!おっしゃる通り、すれ違いつつもこの辺りから少しずつ二人の距離が縮んでいく予定です(*^^*)のんびり更新ですが精一杯頑張るので、最後までよろしくお願いします! (2021年7月6日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん(プロフ) - めっっっちゃめちゃ面白いですね…実弥さんと夢主さんがすれ違いながらも徐々に近付いていく感じがね!もう、ね!(*´・v・`)いつも更新、本当にお疲れ様です。これからも楽しみにしております!! (2021年7月6日 10時) (レス) id: b998dfb0fd (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 衣世さん» コメントありがとうございます!小説版読んでいた時に、実弥さんとカナエさん…そうなのかな?と思ったので、「2」で一瞬カナエさんのこと書きましたが、ファンブックで確定したときは驚きました(*_*)まだその辺の下書きがとっ散らかっていますが、更新頑張りますね(^^) (2021年6月18日 17時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年6月18日 5時