家族ごっこ始めました 5【不死川実弥】

すれ違う思考と嫉妬 ページ16

「私は、今まで実弥さんが私を助けてくれたように、私だって貴方のこと守りたいんです。………例え実弥さんが、私のこと信頼していなかったとしても、実弥さんに想い人が居たとしても、私は───」


“ここにいたい”


その言葉を口にする前に突然引き寄せられた。

そして、言葉の続きを呑み込むように唇が塞がれる。


「んっ！……んーっ！？んんーーー！！？」


訳が分からなくて、頭の中は真っ白だった。

噛みつくように角度を変えて、何度も唇を塞がれる。


逃げようと身を捩るけれど、いつの間にか後頭部も腰も彼にしっかり捕まえられていた。

顔を逸らそうとしても私に続きを話させまいと、彼の唇が執拗に追いかけてくる。

苦しくなってきて、ぎゅっと目を瞑れば目元に涙が滲んできた。


うまく息が出来ない。

思考が奪われていく。

頭がぼーっとしてきたところで、唇が離されて堪らず息を吸い込んだ。


「……誰がAを、信頼してねぇだってェ…？」

少し荒い息遣いの声が降ってきて目を開くと、どこか色っぽくて、切なげな眼差しと視線が合う。


「っ、……だって、私に………痣のこと黙って…んっ！」


“私に痣のこと黙っていましたよね？”


全て言いきる前にまた唇を塞がれる。


「っぅ、………んっ！」

最初は乱暴だったのに、段々と味わうような口付けに変わっていく。

ほんの少し唇が離されて、すかさず息を吸い込めばまた直ぐに口付けられる。


「…ん、ふぅ、………っ……」

今までされてきた接吻の中でも、とても長くてけれど優しくて。


こんなの、知らない。


求められているのかと勘違いしてしまいそうになる。


「……俺に想い人がいたとか、誰に聞いたか知らねェが、………昔のことは忘れちまったなァ…」

いつの間にか私は実弥さんの膝の上に座らせられていて、すっぽり体を包み込まれていた。

そして、また口付けが降ってくる。


このままでは流されてしまう。


「っ！…や、………やめっ！……んっ！」

手で彼の胸を押し返すけれど、びくりともしない。
それどころか抱き締められる力が強くなった。


体から力が抜けていく。

残った力で必死に彼の寝巻きを掴んだ。


すると「A…」と名前を呼ばれて、そのあまりに優しい声色に、胸がきゅんと締め付けられる。


「………お前だって粂野のこと好きだったろォ」

「っ！」


その言葉と共に漸く離れた彼の唇。

されるがままだった私は息を切らしていて、頭が回らない。

はぐらかし→←守りたいから

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す