奪う ページ14
「お前、やっぱり竈門とデキてんだな」
その言葉に今度は私が驚く番だ。
「…え?」
「やましいことがあるから、言いたくねェんだろ」
「そんなこと…」
「だったら何で言えねェんだ!」
「っ!」
「アイツがこの屋敷に稽古に来た日、こそこそ二人で部屋に籠ってたよなァ?それにお前、今でも稽古終った後に竈門と二人っきりで会ってんだろォ?」
「え、…………どうして……実弥さんが、それを知って……?」
私と炭治郎くんとの特訓は、一緒にお昼を食べている皆しか知らない筈だ。
「やっぱり隠してやがったかァ」
「待ってください。黙ってはいましたけどやましいことは何もありません!」
そう。私は実弥さんに炭治郎くんと特訓していることを黙っていた。
けれどそこに下心は一切ない。
「じゃあ何で言わねぇ?何で俺を避ける?」
「それは………」
目を泳がせると、コツンと私の額に彼の額が合わさる。
「出て行けよ」
たった一言。
それなのに、心臓が抉られたように痛んでドクリと不気味な音を立てた。
「な、なんで………」
「好きな奴が出来たんなら出て行け。ここから、今すぐにだァ。…じゃねェと…………」
そこまで言って私の顎を掴んでいた手の親指が私の唇をなぞる。
「っ…!!」
「………奪うぞ」
低い声が耳元に届いて、ほんの少しの恐怖と恥ずかしさと緊張で体がぞくりと震えた。
ここから去らなければ、“無理やり接吻する”と言われている。
もう何度も私の唇を奪っておきながら、今そんなこと言うなんて狡い。
私が那田蜘蛛山で怪我したとき、破門にした私に『戻ってこい』と言ってくれたのに。
それなのに、また私を追い出すの?
鼻の奥がつーんとしてきて、涙が出そうになるのを必死に堪える。
「や、です……」
出て行きたくない。
そんな思いで何とか告げると、「じゃあ逃げろォ」と言いながら、空いている手が私の後頭部を固定した。
実弥さんの吐息が顔にかかった瞬間、お互いの唇が触れる。
「………ん…!」
これは私を追い出す為の接吻。
だからなのか、今までの中で一番辛く悲しく感じた。
けれど、触れるだけで案外あっさり離れた唇。
私はいつの間にか肩に入っていた力を抜く。
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月見(プロフ) - 澪凪さん» 嬉しいコメントありがとうございます!お待たせしてばかりですが、更新頑張りますね!最後までどうぞお付き合い下さい(*^^*) (2021年7月29日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
澪凪(プロフ) - やばいです好きぃぃぃぃぃぃぃっ!!頑張ってください、めっちゃ楽しみにしてます! (2021年7月29日 9時) (レス) id: 279a2ef6a9 (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - みっちゃんさん» ありがとうございます!おっしゃる通り、すれ違いつつもこの辺りから少しずつ二人の距離が縮んでいく予定です(*^^*)のんびり更新ですが精一杯頑張るので、最後までよろしくお願いします! (2021年7月6日 21時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん(プロフ) - めっっっちゃめちゃ面白いですね…実弥さんと夢主さんがすれ違いながらも徐々に近付いていく感じがね!もう、ね!(*´・v・`)いつも更新、本当にお疲れ様です。これからも楽しみにしております!! (2021年7月6日 10時) (レス) id: b998dfb0fd (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - 衣世さん» コメントありがとうございます!小説版読んでいた時に、実弥さんとカナエさん…そうなのかな?と思ったので、「2」で一瞬カナエさんのこと書きましたが、ファンブックで確定したときは驚きました(*_*)まだその辺の下書きがとっ散らかっていますが、更新頑張りますね(^^) (2021年6月18日 17時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年6月18日 5時