書物 ページ27
炭治郎くんの話を私たちは静かに聞いた。
過酷な状況で戦い、守り抜いた煉獄さんの姿が頭に浮かんできて目頭が熱くなる。
陽翔と陽葵にはまだ難しい話だった筈だけれど、二人とも鼻をぐすぐす鳴らして哀しみに堪えていた。
「力及ばず、申し訳ありません」
バッと炭治郎くんが頭を下げると、涙を見せながら千寿郎くんが笑う。
「気になさらないで下さい。兄もきっとそう言いましたよね」
なんと声を掛けるべきか悩んだのか、炭治郎くんは黙って千寿郎くんを見ていた。
「炭治郎さんは、知りたいことがあったんですよね?父が持っていた書物に心当たりがあります。持ってきますね」
一旦部屋を出た千寿郎くん。
その間に炭治郎くんに聞けば、“ヒノカミ神楽”について知りたいらしい。
「ほら、Aさん見ませんでした?那田蜘蛛山で一緒に戦った時、俺の刀から火が出たところ」
言われて炭治郎くんが聞いたことのない呼吸を使っていた事を思い出す。
どうやら炭治郎くんも詳しく知らないらしく、家で教えて貰った神楽で技が使えたらしい。
そんな事もあるんだ………
ポカンと口を開けて驚いていると千寿郎くんが戻ってきた。
「これではないかと思うのですが…」
炭治郎くんに差し出された書物は二十一代目の炎柱が書いた物だった。
パラッと中身を捲った炭治郎くんの手元を皆で覗き込む。
「こ、これは………」
中身は酷く破れていて、殆んど読めない状態になっていた。
「ボロボロだぁ!」
「やぶけてるー!」
陽翔と陽葵が口々に言うと純粋な疑問を炭治郎くんが口にする。
「元々こうだったのかな?」
「いいえ…そんな筈はないです。歴代炎柱の書は大切に保管されていますから…。恐らく父が破いたのだと思います。申し訳ありません」
焦ったように答えて、しゅんっと肩を落とす千寿郎くんに炭治郎くんが慌ててる。
「千寿郎さんのせいではないです。どうか気になさらず」
「わざわざ足を運んで頂いたのに、“ヒノカミ神楽”や父の言っていた“日の呼吸”について結局なにも………」
「大丈夫です。自分がやるべき事は分かっていますので」
手掛かりが読めなくなっていて落ち込んでいると思いきや、炭治郎くんは前向きだった。
「……あの、話に水を差すようで悪いんだけれど、“日の呼吸”って?」
私は炭治郎くんより長く鬼殺隊にいるけれど、初めて聞く名前の呼吸に首を傾げた。
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月見(プロフ) - 京華さん» 初めまして。とても嬉しいコメントありがとうございます!楽しんでもらえるようにこれからも頑張ります!のんびり更新ですが、よろしくお願いします(*^^*) (2021年4月22日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - 初めまして。コメント失礼致します。月見さんの描く実弥さんが格好良過ぎて大好きです!更新嬉しかったです!今後も楽しみにしています♪ (2021年4月22日 19時) (レス) id: 483ff1bb3b (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き)さん» 変換ミスしたまま気が付かず更新していたみたいです。修正しました!ありがとうございます(^^) (2021年4月16日 13時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き) - すいません、26ページ無断の所、炭治郎が千寿郎くんに頭突きの事を謝るところの(お義父さん)は千寿郎くんと槇寿郎さんは実の親子なので(義)は付けなくていいんじゃないかなと(^_^;) (2021年4月16日 8時) (レス) id: c50ca7ded5 (このIDを非表示/違反報告)
星奈 - こんな初見野郎でもコメント返してくれてありがとうございます!(*´ω`*) (2021年4月9日 22時) (レス) id: a759e2d602 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年3月8日 17時