蓋 ページ13
「お父さんがどうして泊まれって言ったか分かる?」
母が食材に視線を戻しながらそんな事を聞いてくる。
「それは………私が久しぶりに帰って来て嬉しかったのと、心配してたからでしょう?」
「それもあるけれど………」
そこまで言って、思い出したかのようにふふふっと母が笑う。
「彼のこと気に入ったみたい」
「へ………?」
父が?
実弥さんを?
「ほら、久しぶりでしょう?貴女が誰かを連れてくるなんて。それとね、貴女のことをとても気に掛けてくれてるのを目にしたから、安心したのねぇ」
その言葉に、先ほどのことを思い出す。
「…私も凄く驚いたよ。まさか、実弥さんが頭まで下げてくれるなんて………」
彼は何も悪くないのに、私の為にあんなことをしてもらって、すごく申し訳ないぐらいだ。
けれど嬉しかった。
後でお礼をしないと。
なんて考えていると、また母が笑い出す。
「ふふふっ。あれが初めてじゃないのよ」
「え?」
初めてじゃない?
どういうことだろう?
母は一度実弥さんと会っているけれど、父とは今日が初対面の筈だ。
「貴女のお見舞いに言った日に、ばったり実弥さんに会ったのよ」
「え…!そうだったの!?」
「あの時も謝ってくれたのよ。………後であのお屋敷の方から聞いたんだけれど、時間の許す限り毎日貴女の様子を見に来てるって聞いて驚いたわ」
「ま、毎日………?」
聞き返すと「夜中に来るとこもあれば、昼間に来て直ぐ帰ってしまうこともあったみたいだけれどね」と付け足された。
「実弥さんが………」
毎日来てくれていた。
そんなこと、初めて知った。
目が覚める前、声だけ聞こえていた時期があったけれど、一度も彼の声は聞いたことがなかったから。
もしかして、目が覚めてからも知らないだけで夜に来てくれていたのだろうか?
そう考えると胸に温かいものが広がって、そこから全身が温かくなっていく。
「今度こそ上手くいくと良いわね」
嬉しそうに笑う母。
でも、ごめんねお母さん。
実弥さんは柱で、本来なら私が近くに居ることなんて出来ないぐらい彼は強い。
陽翔や陽葵と出会って、運良く彼の継子にしてもらえただけ。
私は実弥さんと少しでも長く一緒にいたい。
だから、今の関係を壊したくないんだ。
「………うん、ありがとう」
笑顔を作って、言葉とは裏腹に私は気持ちに蓋をした。
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月見(プロフ) - 京華さん» 初めまして。とても嬉しいコメントありがとうございます!楽しんでもらえるようにこれからも頑張ります!のんびり更新ですが、よろしくお願いします(*^^*) (2021年4月22日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - 初めまして。コメント失礼致します。月見さんの描く実弥さんが格好良過ぎて大好きです!更新嬉しかったです!今後も楽しみにしています♪ (2021年4月22日 19時) (レス) id: 483ff1bb3b (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き)さん» 変換ミスしたまま気が付かず更新していたみたいです。修正しました!ありがとうございます(^^) (2021年4月16日 13時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き) - すいません、26ページ無断の所、炭治郎が千寿郎くんに頭突きの事を謝るところの(お義父さん)は千寿郎くんと槇寿郎さんは実の親子なので(義)は付けなくていいんじゃないかなと(^_^;) (2021年4月16日 8時) (レス) id: c50ca7ded5 (このIDを非表示/違反報告)
星奈 - こんな初見野郎でもコメント返してくれてありがとうございます!(*´ω`*) (2021年4月9日 22時) (レス) id: a759e2d602 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見 | 作成日時:2021年3月8日 17時