甘えとけ ページ2
陽葵を見守りながら辺りを見回す。
机や床は子どもたちが遊んだ後が残っていて、物が出しっぱなしなっている。
開いた戸から見える台所は一応片付けられていたけれど、洗った後のお皿や調理器具は出しっぱなしだ。
私が出て行ってから、実弥さん一人で二人の面倒を見てくれていたんだ。
一通り上の方の埃を落とし終わったらしく、実弥さんが陽翔を肩から降ろした。
「次は何するのー?」と興味深々の陽翔に「上が終わったら床だァ。箒と塵取り、それから雑巾とバケツも取ってこい」と指示している。
ぱたぱたと廊下の物置に駆けて行く陽翔を見て、「ひなちゃんもいく!」と兄妹揃って走っていく後ろ姿を実弥さんと眺めながら話しかける。
「実弥さん」
「何だァ?」
「実弥さんは、私がこの家を出たあともお一人で頑張っていたんですね」
言えば、何処か照れ臭そうにそっぽを向かれる。
「…んなことねェ」
「私、戻ってきたからには、今まで休んでいた分まで頑張ります!」
張り切ってぐっと握り拳を作ってみせると、額をぴんっと指で弾かれた。
「いだっ……!なっ!何するんですか!?」
ヒリヒリと痛む額を押さえながら涙目で彼を見る。
「A、お前こそもう忘れたかァ」
「え?」
「肩の力入れて張り切りすぎるとまた寝不足になるぞォ」
その言葉に全集中・常中を会得しようと必死になっていた日々を思い出す。
あの時の私は、色々と自分一人でやり遂げようと必死になっていた。
「…そんなこともありましたね」
「お前は胡蝶から任務の許可が降りるまで、のんびりしておけ」
「そういう訳にはいきません」
反論すれば実弥さんが目を見開く。
「あ…?」
「そんなことしたら今度は実弥さんが体を壊してしまいます。もう怪我はほぼ治りましたし、私は大丈夫です!暫く家事の大半は任せてください!」
言えば、はぁーっと盛大にため息を付かれる。
「まだ重い物持てねェ奴が何言ってやがる」
「う゛…」
「いいから、今のうちに少しは甘えとけ」
そう言って、ふっと優しい笑顔を向けてくるから、どきっと胸が鳴った。
だが、それも束の間。
「完治したらまた稽古付けてやるよォ。今度は下位の十二鬼月ぐらい一人で倒せるように特訓だ」
「え…?」
先ほどとは打って変わってニヤリと好戦的な眼差しを向けられて、背筋がゾクッとする。
「し、師範………?少しは手加減してくださいね??」
震える声で私は何とかそれだけ告げた。
353人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月見(プロフ) - 京華さん» 初めまして。とても嬉しいコメントありがとうございます!楽しんでもらえるようにこれからも頑張ります!のんびり更新ですが、よろしくお願いします(*^^*) (2021年4月22日 20時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
京華(プロフ) - 初めまして。コメント失礼致します。月見さんの描く実弥さんが格好良過ぎて大好きです!更新嬉しかったです!今後も楽しみにしています♪ (2021年4月22日 19時) (レス) id: 483ff1bb3b (このIDを非表示/違反報告)
月見(プロフ) - さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き)さん» 変換ミスしたまま気が付かず更新していたみたいです。修正しました!ありがとうございます(^^) (2021年4月16日 13時) (レス) id: 3e917b4f85 (このIDを非表示/違反報告)
さねみん推し(だが渋い槇寿郎も好き) - すいません、26ページ無断の所、炭治郎が千寿郎くんに頭突きの事を謝るところの(お義父さん)は千寿郎くんと槇寿郎さんは実の親子なので(義)は付けなくていいんじゃないかなと(^_^;) (2021年4月16日 8時) (レス) id: c50ca7ded5 (このIDを非表示/違反報告)
星奈 - こんな初見野郎でもコメント返してくれてありがとうございます!(*´ω`*) (2021年4月9日 22時) (レス) id: a759e2d602 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月見 | 作成日時:2021年3月8日 17時