〃 ページ38
「っ!!!」
「いったぁっ!!!」
「死ね!!!!」
「はあ!?それは言いすぎじゃ…！」
顔を真っ赤にした春真は、その後も絶え間なく私を殴る。
いくら小学生と言えど、本気のグーはかなり痛い。
どうやって止めようか。そんなことを考えていると
「っ……」
Aが春真を止めた。
そして、急に殴ったら駄目だとか、死ねって言葉を使っちゃだめだとか、優しい声色で怒った。
「ご、…ごめん……なさい…」
あかん。
春真の表情を見て咄嗟にそう思った。
めちゃくちゃ傷ついてる、めっっっちゃくちゃ傷ついとる!!!
「あ……あー、あのさ……A、今のは私が悪いっていうか……」
えっ、と声を出したAは振り返る。
どういうことかと聞かれ、素直に口を開けた。
「…そのー…春真の純粋な心をからかって遊んでたと言いますか…春真の反応が面白くて遊んでたといいますか…あはは…ひいっごめんなさい!!!」
拳の次は、Aの持っていた鞄で殴られた。
いや、これは私が悪いけども。
春真に向き直ったAは、急に怒ってごめんねと目線を合わすように少しだけ屈んで優しい口調で謝る。
視線が合ったせいか、春真はまた真っ赤になった。
「あっ、いや、おれも、死ね、と…か言ったのは悪い、し……だ、だ…から…別に…」
「お前その素直さもう少し私に向けてくれな…いですよねぇ…」
ぎらりと睨まれ、これ以上下手なことは言うまいと口を閉じる。
私を睨んだ後、春真はAを見て視線を落とした。
「あの、…あのさ、…えと、……A…さん…に、渡したい、もの……あって…」
話しかけられたAは、ん?と聞き返す。
春真の視線の先には、先ほどから握りしめていたものがあった。
けれど、
「……ぁ…」
紙だろうか。
くしゃくしゃになったそれを見て、春真は顔を青くした。
Aが、春真の名前を呼ぶ。
「……なっ、なんでもない………で、す…」
青い顔のまま、春真はその紙を後ろに隠した。
「春真?」
私も名前を呼ぶが、春真からいつもの生意気な反応はない。
「…おれ、帰る…」
「はっ!?ちょ、Aに用事あったんじゃ…あっ、春真!!」
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作者名：不雲綺
| 作成日時：2017年7月21日 17時
