２ ： ○○ × ヤンデレ ＝

〃 ページ17

昔はもっと、オレの色が多かったと思うのだけれど。
成長するにつれて、知らない世界を知っていくにつれて、お前からオレが消えていく。


「……少し、ぼうっとしただけ」


オレの求めているお前が、消えていく。
それを考えると、ゾワゾワとした嫌な感覚が全身を走っていった。


(このAを、どうにかして崩さずオレの隣に置いておけれたら…)
(………ああ、いや)
(もっと、オレにベッタリでも、いいかもな)


キャンバスの上に、新しい色を乗せる。


(オレに依存して、)


次はまた、違う色。


(オレだけに関心を抱き、オレだけを想う)
(他の人間なんかには近づくところか見もしない)
(可愛いその声で、オレの名前だけを呼ぶ)
(昔からオレを引っ張ってくれるその手で、オレだけに触れる)

(Aにとって、オレがすべてになれば、最高だな)


無我夢中でキャンバスの上に色をつけていると、Aがオレを見ていることに気付く。
絵ではない、オレを。
その視線に応えるように、もう一度オレも彼女のほうを向いた。


(…違う)


Aに視線を向けたとき、やっぱり、違う色がそこに佇んでいた。


(違う、違う違う違う違う…)
(…お前にあう色は、)

(お前の色は、それじゃない)


邪魔な色がオレを消しているのだと思うと、苛々する。

昔はあんなにも、オレを見てくれていたのに。
どうして今更オレから遠のいていく?


「……お前」
「変わったよな」


音となったその言葉に、自分で言ったのにもかかわらず胸が大きく跳ねた。
彼女は言葉の意味を理解できず、首を傾げる。
違う色に染まっている彼女を見るのが嫌で、視線をキャンバスに戻した。


「！」


思わず、息をのむ。
オレの想像通りの絵が、キャンバスの上に広がっていた。

オレが描き、色を塗った、絵。


(…ああ)
(………Aも、こうすればいいのか)


張りつめていた何かが急にプツリと切れる。
体中から力が抜けそうになったけれど、手は筆を強く握りしめた。


(Aを変えてしまう色を、消して)
(オレの思うままに色を塗っていく)
(そうすれば、お前はオレの理想になってくれるんじゃないか?)

(こうして、絵を描くのと同じように…)


オレの理想になったお前を想像しただけで、口元が緩む。
彼女が、オレの名前を呼ぶ。
視界に映るお前は、やっぱりオレの好きな色じゃない。

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