[短編集]＿一日一笑顔...四...＿[曇天に笑う]

蒼世―…甘え((來斗様リク) ページ6

「…ありがとうございます」



完璧に風邪を引いた日。


隊長がわざわざ家に来て、看病をしてくれている。



「薬を飲んだら、すぐに横になるといい」


「…はい」



返事をして、渡された薬を飲む


…なんでこう、薬は苦いのだろうか。


口内に変な味が広がる



「…」


「お前は風邪引いても、表情崩さないんだな」


「…そうですか?」



そう見えるのだろうか


自分ではあまり意識しない



「一見、いつも通りに見えるぞ」


「なら、そこそこ元気なのかもしれませんね」


「どうだかな」



飲み終わり、隊長の言うとおりに布団をかぶる


瞬間、隊長が冷たい手で頬に触れた


思わず体がビクつく



「…そんな反応もするのか」


「そんな反応…とは…?」


「…いや、気にするな」



その冷たい手で、頬を撫ではじめる


どうしたのだろうか


でも喋ろうと思っても、それすら辛いので


視線だけで伝える



「私が一見普通。そう言ったのは表情や態度であり、元気かどうかではない」


「…はぁ…」



よくわからない、と意味を込めながら一応返事をする。



「顔色は悪いし、声も鼻声だ。汗をかいているのだから暑いのだろう。体もこんなに火照っている」



…そんなに分かるモノなのか。


全く違う所に集中してしまう。



「…んっ」



頬に触れていた手が、ゆっくりと上へ行き


前髪で隠れていたおでこに触れた



「よく見れば、目もいつもより閉じている。口は少しだけ開いていて息が荒い」



…息が荒い


それを言われたからか、無意識に呼吸を整えようとする


…しかし、それまでお見通しなのか



「無理するな」



ふっと笑った



「風邪引いてる時くらい、甘えたらどうだ」



…あなたには、甘えてしまっているつもりなんですけどね


他の方に興味は向かないけど、貴方の前だと何かを意識してしまう



「…甘える…ですか」


「ああ」


「…もう、してると思いますよ」



ばくばくとなる心臓。


きっと熱とは違う意味で顔は真っ赤だろう


思わず、顔を腕で隠す



「…どういう意味だ」


「…き、気づかなくても結構です」



そして、片方の手で


そっと隊長の手に触れる



「…っ」


「甘えて、いいですよね」


「…私が言ったのだから、別にいいだろう」


「…いてください。ここに」



風邪は苦しい


知ってる



「…言われなくてもいる」



…なので、どきどきで紛らわせよう。


…それもそれで、大変だなぁ。

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