[短編集]＿一日一笑顔...弐...＿[曇天に笑う]

芦屋―…機嫌直し((神鬼様リク) ページ17

芦屋視点
――

「それでね、芦屋」



彼女のAはこちらの機嫌を全く気にすることなく話す


まあ、俺が雰囲気を何とか柔らかく保とうと誤魔化しているせいもある



「聞いてる?」



不安げな顔で俺の顔を覗くものだから、


一瞬だけ、自分の中の黒いものがなくなる



「えぇ、聞いてますよ」


「ならいいんだけど・・・何かあったら言ってね」


「大丈夫です、さ、話の続きを」



そう言うと、話を進める


・・・自分で「話の続きを」なんて言っておきながら


その話を聞くとぐつぐつと苛立ってくる


原因は・・・



「その時隊長さんがっ――で、武田くんが――」



話のうちに出てくる男の名前。


それが原因。しかもAは楽しそうに話す



「あ、芦屋・・・」


「なんです」



ふっと、また彼女の顔が暗くなる



「さ、さっきから何がそんな嫌なの・・・?」


「・・・気づいてましたか」


「そ、そりゃ・・・そんな黒いオーラ出てたら気付くよ」



気付かれたので、遠慮なくむすっと不機嫌オーラを出す


Aは困ったような顔を見せる


・・・その顔とか、誰にも見られてませんよねぇ


そんな無防備な顔、俺以外に見せたとかいうのなら流石にキレます



「・・が、頑張って話してるけど、流石にもうないよ・・。何したら不機嫌治るのさぁ」



その言葉に、すこしほっこりする。


俺のために頑張って話をしてくれたんですか。


・・でも、原因はその話なんですけどねぇ



「どうしたら、って簡単ですよ。ちゅー、すれば治ります」


「・・・ち、ちゅー・・!?」



真っ赤になるA。


そんな愛らしい姿が俺の心をくすぐる


うずうずと、身体が動きそうになるのを我慢して続ける



「ほら、俺の機嫌治したかったらちゅーしてください」


「あ、芦屋が不機嫌になる度にしなきゃいけないの・・・っ!?」


「その時はその時。今はちゅーしてくれれば本当、なおりますから」



自分から抱き着いたり、キスするのは我慢


・・・しっかし、そんな顔見せられたら限界があるってものですよ


でも、Aからして貰う為です。



「ほら、俺を嫉妬させた罰です」


「し、嫉妬っていつ・・・」


「今。俺と二人っきりにもかかわらず他の男の名前出したでしょう」


「そ、それか・・・っ！」


「ん、俺はいつでもいいですよ」



そう手を広げて構えると


・・・優しく、一瞬だけAの唇が触れた。



「短いです」


「文句言わないで！」

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