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手首を離された途端、一気に力が抜けて
ヘタっとその場に座り込む。
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和也「・・俺、雨止むの待ってるとかじゃねぇから。」
「え・・」
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カズにぃは座り込む私を振り返って見下ろし、
冷たくそう言った。
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和也「吉野先生待ってる。」
「え・・、どうして・・・」
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フっと笑ったカズにぃが、
座り込んだ私の前にバっとしゃがみ込み、
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和也「お前に、関係ねぇじゃん。」
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と、
意地悪く、冷たく言い放った。
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その言葉に対して、
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そうだね。
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なんて、ウソにも言えなくて。
どう対処すればいいのか分からない胸の痛みが
後から後から私の心に突き刺さる。
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「・・か・・傘がないならｯ･･･っ」
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必死に言葉にしようとしたのも虚しく、
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和也「あ、来た・・吉野せんせ。」
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ギューっと手を握り締めて言おうとした言葉は、
カズにぃに遮られた言葉によって
心に押し戻され、ピシャっと戸を閉められてしまった。
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吉野「あら・・、二宮ちゃんも一緒なの？」
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吉野先生の綺麗で可愛らしい声を、
今は、一番聴きたくない。
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和也「コイツは関係ないよ。」
吉野「え？そうなの・・。」
和也「大丈夫だから、ほら・・、車行こう？」
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カズにぃに華奢な肩を押されて、
先生は、綺麗な足音を響かせながら
下駄箱から出て行こうとする。
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どこに行くの？
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なんて聞いても、
きっとまた
"関係ない"
としか返ってこない。
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行かないで。
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なんて、言えるわけない。
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だけど
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大野先輩は何て言ってた？
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"Aちゃんの気持ちを、ニノに伝えちゃえばいいのに"
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"自分で思ってるよりも、人って相手の気持ち分かんないんだよ"
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そうだ。
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大野先輩は
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そう言ったの。
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まだ、一度も自分の気持ち言ってない。
カズにぃからだって、聞いてない。
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それなら―････
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「かっ・・・カズにぃｯ・・・！」
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作成日時：2012年5月1日 19時
