カジノD,D (ページ12)

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dt「お口直しにブランデーブライザーはいかがですか？素敵なレディ」
「情熱的な殿方は大好きよ……いただくわ」
　モヒートのカクテル言葉は「心の渇きを癒して」。
　ブランデーブライザーのカクテル言葉は「心に火がついた」。
　宮舘涼太は、カジノD.Dのバーテンダーである。スリリングな賭け事の余興を楽しむ客や、バー目当てでやってくる客、さまざまなニーズでやってくる客、一人ひとりに対応している。そしてもう一つの役割は……時にやってくる「依頼」の内容の確認や報酬の有無……実質的な交渉担当である。彼は「カジノD.D」に持ってくる「依頼承諾の有無」全てを取り仕切ってるといってもいい、任される実力を持っている。そして、このカクテルの応酬が意味するのは、一つ。
　交渉成立。

　店の方は、複数の管理職に任せ、支配人の深澤から警備員の岩本を含む「幹部」が会議室に移動する。会議室といっても、小さい給湯室が併設され、防音効果が期待できる白い壁に囲まれた簡素な部屋である。……まあ、もっと言えば、その白い壁の向こう側にはそれぞれの愛用の武器が保管されている倉庫があるのだが、それは別の話である。
iw「康二、人払いは？」
kj「完璧にすましとりますよ、照にい……いや、ボス」
　警備員の制服を脱いだ岩本照が、満足げに頷く。
iw「よし、んじゃ始めるか……翔太、立ったまま寝るな」
nb「んあ……っ……ふわぁ……」
　渡辺が欠伸をかみ殺しながら、その場にあった木製の椅子にドカリと腰を落とした。それに続くように、８人のメンバーが会議室に置かれている椅子に腰を落ち着ける。
　……集まった八人のメンバーこそ、このカジノ店の真髄だ。
　会議室、という面目を守る為だけに設置された白いホワイトボードの前に、阿部と深澤が椅子ごと近づいた。阿部の手にはペンが握られている。
　深澤は宮舘から受け取った白いカードに目を通しながら、口を開く。
fk「依頼主は異国にある遊郭の主。内容はこの国で特注した薬の運搬車を護衛すること」
　深澤の言葉を聞き、阿部がホワイトボードに、「遊郭の主」「薬運搬の護衛」と書き込んだ。「何か質問は？」と振り返りざま短く問うと、目黒がそこで綺麗に手を上げる。