カジノD,D (ページ11)

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依頼ページ11

たまにあることだ。
朝、目が覚めると無性に喉が渇いて、妙に体温が高い。そういう時は、絶対に肌が荒れている。前日、絶対完璧にケアしたのに。衝動的に、極限までろ過した水を身体の許容範囲ギリギリまで煽って、ありったけの化粧水を肌に叩きつけた。いつもそうしている。
「なんなんだよ……」
　放り投げるように呟いて、鏡に映る成人した男を見つめる。鼻筋が通ってて男前、うん、今日も間違いなく俺の顔。なのに、なんでだろう。目の前にいる顔が、誰かの顔と重なる時がある。誰かが、俺の腹の中で叫ぶ。
熱い……よ、くるし、息が……りょ…………………。
たまにある。突拍子もない夢の話だ。

　阿部ととある客がポーカーゲームを観客向けに繰り広げている頃……宮舘が所属するバーカウンターはまるで別世界のように穏やかな空気が流れていた。厳かにジャズ音楽が流れる中、カジノルームから聞こえる喧騒に何かやってるな、と横目で捉える。
　その時、一人の女性がふらりとバーカウンターに立ち寄った。女帝の象徴部分に目がいきそうな様相だ。そのまま腰かけ、棒切れのような人差し指を上げる。迷うそぶりは一切なかった。
「モヒートをお願い」
　自然と、宮舘の双方が細められた。
dt「見かけない方ですね」
　磨きかけのグラスはひとまず置いて、宮舘は後ろを振り返り、戸棚からラム酒を取り上げた。
「観光できたの、この国もなかなか面白いわぁ。でも、はしゃぎすぎもよくないわね、観光のしすぎで、荷物が大きくなってしまったの、だから、片手で運んでくださるような、使い勝手のいい殿方を探していましてよ？」
dt「……レディなら、どんな男でも魅了してしまいそうですが」
「いやぁねぇ分かってるくせに、いじわるな方」
　彼女は、ゆっくりと頬杖をつく。そして挑発的に微笑むと、一枚の紙を差し出した。
「報酬ははずみます、故郷にいる家族へ送る特別なお土産が入っていますの……噂の『何でも屋さん』はレディの扱いは心得ていらっしゃる？」
　硝子と氷がぶつかる音がする。宮舘は女性の前に緑のミントが瑞々しく飾られるモヒートを差し出すと、女性の差し出した白い紙に目を通す。一つ頷き、女性がモヒートを一口堪能するのを確認すると、「お味はいかがですか？」と問いかけた。
　女性は幼い少女のように無邪気にその桜のような舌を覗かせた。
「やっぱり私、ミントは苦手みたい」