カジノD,D (ページ2)

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渡辺翔太は気分屋である。所属は宮舘と同じバーカウンターだが、ルーレットピットのピット・マネージャーでもある。そのせいか、本人の気質のせいか、その日の気分によっている場所を決めてしまうのだ。困ったものだが、ゲームを盛り上げる実力はぴかいちなので、質が悪い。
ab「また慎太郎たちの店にでもいったんじゃないの？」
fk「それだったら余計厄介なんだよ……」
ab「舘さんはなんて？」
fk「今日は朝からカウンターいなかったとさ……あぁもうどこいったんだよ～」
　折角セットした髪を乱暴に掻き回しながら、深澤は歓声が上がっている方向へ自然と視線を向けた。どうやら、初めて来客した客が、古株相手に大儲けしたらしい。ありゃあ今宵の主役間違いなしだな、と深澤は目を細めた。
fk「俺一応責任者だから、賭博場の全体把握しときたいのにぃ」
ab「大丈夫でしょ、翔太は一応『幹部』なんだから……ちょっとばぶいとこあるけど」
fk「あーの気分屋お坊ちゃん育ちめ……あぁ、ねえ翔太あぁ……どこ行っちゃったのよぉ……」
　仕方ない、と頭を振る。これ以上、行方不明の「幹部」に裂く時間はない。馴染みの客を待たせているのだ。第一、翔太だって大の大人なのだから、阿部の言う通りそこまで気にする必要もないのだろう。翔太の捜索は少し経ってから改めて行うとして、と踵を返した時、向こうのポーカーテーブルから薄い硝子が床で割れた音が響く。
kj「ちょおお客さん、困りますって！」
　それと同時に響く、ルーレットテーブルにいるディーラーの焦った声。
　そこにはたばこの火を、厚底の靴で乱暴に消しながら、顔を真っ赤にした中年の男性客がわなわなと震えていた。足元には投げたのであろうカクテルグラスが粉々になっており、じわじわとアルコールの染みが広がっている。
　……あーあ、このカーペットにこびりついた灰と染み、掃除すんの誰だと思ってんのよ……。
「うるせえ若造があ！！もう一回だ！！もう一回やらせろ！！」
kj「いやですから、もう一回もなんも、お客さんもうすっぽんぽんでしょぉ？どうします？唯一残ったその靴でも賭けます？」
「うるせえええええいいからやらせろ！！！！ちょこまか口答えすんじゃねー！！！！」
kj「お客さんのために言うとるのに……」