＊８日目...他の友達と遊ぶ ページ19
ーside youー
ぱちり。
目覚ましもセンラさんからの声掛けもなかったけれど、体は十分に休んだのか、自然と目が覚めた。
ゆっくり起き上がるのと同時に、違和感を覚えていることに気づく。
「なん、だろ」
まだ微睡みの中にいる脳みそを一生懸命動かして、違和感の正体を探る……その前に本能的に何が足りないのかわかった。
目を覚ますと必ず感じる美味しそうな朝食の香りと、それから。
「……センラさんが、いない」
この広い部屋は間を遮るものなんて何一つないから、部屋にいる限りセンラさんに気づかないことなんてない。少なくとも今まではなかった。
でも今は確かに、センラさんが、いない。
奥の部屋にいるのかな、早く出てきて。
そんなふうに少し拗ねていると、隣の部屋の扉が開いた。
「あ、センラさ………」
そこから出てきた人物に、わたしは目を疑う。
ごしごしと瞼を擦って、もう１度隣の部屋から出てきた人物を見つめた。
「あ、起きたんですか？よかった、あまりにも穏やかに眠っているから、もう二度と、目を覚まさないのかと……」
センラさんとは全く違うタイプの、透き通った高い声に、今にも折れてしまうのではないかと思うほどか弱そうな身体。
そして、何色にも染まっていない真っ白な髪の隙間から覗く、カクテルのように透きとおった……ベルベット。
アルビノ、という言葉が恐ろしいほどお似合いな男の人が、そこには立っていた。
「だれ、ですか」
私が震える声でそう問いかけると、彼は驚いたように目を見開き、そして、悲しそうに伏せる。
長いまつげがよく見えるその表情に、なんだか胸が苦しくなった。
「ごめんなさい、今、記憶喪失なんですよね……えーっと、何か覚えてることって、ありますか？」
何か覚えていること。
目を覚ましていた私が覚えていたのは、たしか。
「センラさんのこと、だけです」
「僕のことは？」
「ごめんなさい、誰かわかりません」
申し訳なくそう返すと、彼は少し顔を歪めた。
私にとってこの男の人は、大切な人だったのかな。それともこの男の人にとって、私が大切な人だったのかな。
「センラくんから、何か話は聞きました？」
「話？」
「……その様子だと、何も聞いてないみたいだね」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 445人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あやね(プロフ) - センラさんの執事姿想像して死にそうです。9月からまた更新待ってます！！ (2021年9月1日 17時) (
レス) id: e7f1d7c7f6 (このIDを非表示/違反報告)
さとう。(プロフ) - 夢主ちゃん可愛すぎ…！！執事センラさん絶対かっこいい(確信)(ツイッターでもリプしたさとうだよ) (2019年5月25日 20時) (レス) id: be458f5802 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ほわいとふぃっしゅ | 作成日時：2018年12月31日 17時
