EXOと神様の昔話 (ページ2)

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はじまり② ページ2

そして、日本で18年生きた神崎Aという人間はパク・シンになり、家族以外には公開されることがないということ。

それも仕方がない。
僕は兄の影響を受けたくないし、兄と関わりのないところで純粋な評価を受けたい。
だから、僕の今までがこの先、邪魔になるってわけだ。

でも僕はすぐに決めきれなかった。

｢3ヶ月でどうだ？｣
｢？｣
｢3ヶ月、君が私を選んでも後悔しないほど、やりたいことをやり切ってくれ。それでもどうしても駄目だったならば、仕方がないさ。潔く身を引くよ。｣

僕は、言われるがままにその3ヶ月の猶予条件をのんだ。

日本に帰って、友達と遊んで、旅行に行って、読みたかった本を読んで、家族との時間を過ごして、やってみたかったことを全部やった。

やりたいと思ったことをすぐ実行する生活の中で、自分にはできないと勝手に諦めたことを1つだけ、思い出した。

｢夢、か…。｣

夢なら、あった。
追いつきたかった。
その背中に。

｢兄さんは何で歌手になったの。｣

一度、そう聞いたことがある。
兄さんの答えはこうだ。

｢一度にたくさんの人を笑顔にしたいからだよ。｣
｢歌で？｣
｢俺の心が見えて聴こえて感じられたら、相手の心を掴めるだろ。そしたら壊れないように、傷つかないように、守ってあげられる。それが俺の夢。｣
｢…兄さんの言うことはいつもよくわからないんだけど。｣
｢はは、俺がそうやって救われてきたからな。今度は俺の番だろ？｣

昔から何もかも完璧だった兄が、音楽に救われたと言った。
彼ほどの人でさえ心に影を落とす日があるというのなら、いったいどれほどの光で照らせばいいというんだろう。

兄さんが真剣に言った“夢”は、簡単じゃない。

僕一人にできることじゃない。

だけど一人じゃなかったら？

一人じゃなかったら――――――。

ただ、それは僕の自己満足のために、まだ見ぬメンバー達を利用することになってしまう気がして、決心という決心ができないでいた。

それでも、僕はあの日から3ヶ月後、韓国へ来ていた。

大きな荷物を持って。

｢僕は未来をかけることにしました。

でもその夢のために、僕は周りを利用することになる。

だから、たとえどんなことがあっても、僕はその全てを守ると、誓います。｣

これが僕の決意だった。