EXOと神様の昔話 (ページ1)

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はじまり① ページ1

｢今日はいい答えが聞けると思っているんだけど、どうかな？｣

僕の目を真っ直ぐ見てそう言った社長に、少しだけ悩むふりをしてから、1度だけ頷いた。

僕が芸能事務所ってものに初めてスカウトされたのは高校一年生の夏休み。

長期休みは親戚に会いにいくために韓国へ行くのが僕の家では毎年の恒例だった。

初めて声をかけられた時はただビックリして、まだ何も考えてなくて、断った。

二度目はその年の冬。
またかと思ったけど前回とは違う事務所からだった。
僕はまた断った。

三度目は高校二年生の秋。
兄さんと二人旅行をした時だ。
また別の事務所だった。
僕は大学進学を考えていて、この時も断った。

四度目は高校三年生の夏休み。
この時がSMのスカウトだった。

僕はまた断ったけど、声をかけてきた男の人は僕に言った。

｢もしまた会うことができたら、きっとそれが私と君の運命だ。だからその時はゆっくり話がしたい。｣

まるでナンパのようだなあと思った。

そして五度目。
僕はあの時の男性と、信号待ちで一緒になった。
思わずお互いに目を見開いて｢あ！｣と声を上げた。
それがおかしくて笑ってしまって、それから本当にゆっくり話をした。

ご飯をご馳走になって、何時間も僕のこと、僕の周りのことを色々話した。
その男性も、彼自身のことを語ってくれた。

そして僕に声をかけた理由も。

｢君に出会ったのは正直運命だと思っているよ。
君しかいないと思った。
本当は君を見るのは3回目なんだ。
1度目は公園で歌っている君を見た。
あの時に心を奪われたよ。
感動のあまり動けなくてね。
声をかける前に気が付いたら君がいなくなっていて酷く後悔したよ。

少し違うけれど、これは恋に似ている。
一目惚れだ。
いろんなアーティストを見てきた私が、今君に熱をあげて恋をしているんだ。
君には形も色もない。
いや、悪い意味ではないよ。
唯一無二という事だ。
既存のものでは測れず、表せない。
だけど確かに惹かれるものがある。

…君は特別だ。｣

確信した表情でそう言いきられて、どう言葉を返せばいいかわからなかった。

彼はただのスカウトマンではなくて、あのSMEの社長だった。
驚きすぎてお茶をこぼしてしまったんだけど、今思うと本当に恥ずかしい。

提示されたデビューの条件。

それは次にデビューする予定のグループのメンバーになることを前提に練習生になること。
その事は周囲の練習生やスタッフにも秘密で、一般には公開されないこと。