【募集企画】東方幻想記録物語 22巻 (ページ9)

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多分この後宴会に向かう人達　メルトページ9

「……御機嫌よう、ようこそいらっしゃいました」

いつも通りの完璧な、如何に目の肥えた玄人であろうと必ず騙される柔和な微笑みを浮かべ、メルトはその外来人達―――もとい昔馴染みの友人とその連れに近付いた。イメージとしては、さしずめ観客を物語の世界へ誘う前説担当の役者といった感じだろうか。

「おや、貴方もいらしたんですね」
「貴方々を迎えるのがわたくしの役目ですので、当然でございます。影山様に百目鬼綾華様」
「えっ、何？貴方は何者？影山、この人と知り合いなの？」
「お言葉ですがお嬢様、そのように騒がれますとただでさえ馬鹿なのが更に馬鹿に見えますのでお控え下さい」
「あんた二度も馬鹿って言ったわね！私、主人なのだけれど！」
「おやおや、随分と仲のよろしい主従ですね」

くすくす、と笑うメルト。実際の所どう思っているのかは死んでも表にしない故に本音は間違いなく異なるのだが、ではどう思っているのかというとそれは全く以て不明である。嘘を吐き過ぎたメルトにとって、最早何が本音で何が虚言なのかは本人すらもわからないのだ。

「……こほん。そうですね、それでは遅れてしまいましたがわたくしの自己紹介をお聞き下さいませ。―――わたくしはメルトアウト・ホームズ・シェリングフォードと申します。影山様とは少々縁がございまして、多少の交友をさせて頂いております。以後お見知り置きを」

本物の役者もかくやの歯切れの良い声で、メルトはすらすらと自己紹介を出力する。影山と親交があると聞いて綾華は少しだけ反応したが、意外とあっさりとしていた。影山が謎の存在すぎて別段驚く事でもないのだろう。

「あら、そうなのね。……なんだか、そもそもこいつが謎多き存在すぎて今更って感じちゃうわね」
「その点に関しては同意致します。影山様は本当にミステリアスな方ですから」
「本当にその通りね。―――でもね、勘違いしないでほしいのは、影山と知り合いだろうとなんだろうと愚民は愚民って事よ。知ってると思うけど私は高貴な身分なの。思い上がった愚民にたかられること程不快な事はないわ」
「……お嬢様。とは言いますが、近頃は『折角学生なのだから学校帰りに友達とプリクラ撮ったりしたいわよね』とぼやいていたではありませんか」
「ちょっ……なんでバラしちゃうのよ！折角お嬢様らしく決めた所なのに台無しじゃないの！」
「……この土地について解説してもよろしいでしょうか？」

コントのような掛け合いに割り込み、少し困り顔で言うメルト。なにが本音かわからなくなったメルトにあって、これは本当に本音だったのかもしれない。