【募集企画】東方幻想記録物語 20巻

全力で「いつもの実力」を　憂梦 ページ43

「…ん？」

舞台は、鬼灯真央が負けつつも最後に白金ハルに一発入れた事で非常に盛り上がっている。しかし、その一連の流れに私は違和感を覚えていた。
確かに鬼灯真央から私でも驚くほどの力が放出されたのは事実だが、白金ハルの能力は根源的には消えていなかった。しかし、なら何故攻撃が効いたのだろうか…まあ、恐らく発動する確率が定まっていないのだろう。

というか今はそんな事を考えている場合ではない。第二戦の出場者は―私、幽玄憂梦だ。
しかし、自分の腕はそんな状況とは相反して痛み続けている。判ってはいたが、待てども待てども痛みが治まる気配はない。…第二戦が始まるまでには治るかと少しだけ希望を抱いていたが、矢張りそんな奇跡は叶いやしなかった。

「…仕方ありませんね」

そう呟いて席を立ちあがる。そもそも何をやっても上手くいかないのが人生というものだ。項垂れていても仕方がない。

観客席から聞こえる騒めきを背に舞台上に上がる。もうこの痛みは意識しないようにしよう。痛みというものは、案外意識していなければ感じないものなのだ。

相手は風原剣城。その実力もさることながら、この強者だらけの幻想郷(せかい)でひたすらに努力をし続けている逸材だ。相手にとって不足はない。

軽く腕を抑えつつ、対戦相手を待った。

叩き込め、「全力全開」 剣城→←そういうことにしよう。そうしよう　ハル

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