風花とミルクティー 2 (ページ13)

今日:13 hit、昨日:4 hit、合計:406,839 hit

…… ページ13

渡「誰に付けられたわけ？」

『え？……え？！』

どうしてもキスマークとは言いたくなくて、名称を出すことは避けた。
俺の声は自分で聞いても相当冷たかったはずなのに、何言ってるんだろう？みたいにキョトンとした顔をしてから、何かに気付いた様子でAは大声で驚いた。
……驚いた？

『……これ、ですよね？』

そう言って、Aは問題となっている赤い痕を摘まむ。
そのまま困惑した顔で続けた。

『……誰に。えーと、強いて言うなら正体不明の虫ですかね？それとも自分かな……？』

渡「は？」

つまり、こういうことらしい。
何日か前に虫に刺されたようでぽこっと膨らんでいたらしいのだが、昨日から痛くなり、触ったり摘まんだりしていたらそこに更に内出血を作ってしまい、赤くなったと。

目「つまり、誰かにキスマークをつけられたわけじゃない、ってことだね？」

ラ「キ、キスマーク？！」

『？！……あ、そう見えるのか。まずいな。』

目黒が、俺が折角言わなかったキスマークって言葉を使ったことにはイラッとしたけど。
それでも言われるまで気付かなかったみたいだから、感謝した方が良いのかもしれない。

『そっか、それで翔太くんは怒ってくれたんですね。……プロ意識が足りてませんでした、すみません。』

そう言って、頭を下げられる。
Aが敬語なのは、反省モードだからだろう。
俺は大人げなく不機嫌を表に出したのに、こうやって冷静に対応されるから、どっちが大人なのかわからない。

渡「本当に虫に刺された？」

阿「うん、傷になってるから、嘘じゃないと思うけどね？」

Aの隣にいた阿部が痕まで顔を近付けて確認する。
というか痛そう、なんて言っているから、炎症の経過は良好とは言えないらしい。

『すみません、余計なことして悪化させて。誤解まで与えるような真似して。』

Aは立ち上がり俺の前まで来て、もう一度頭を下げた。
と思えば突然俺の右手を持って、Aは自分のその痕を触らせた。
俺の手が触れたと同時に少しだけ顔を歪めたのは、触れられただけで痛いからだろう。
そしてAが言った通り、その痕は膨らんでいて傷になっていた。