◆80 ページ7
暫く雑談しながら待っていると、葵と大旦那様が波止場に現れた。
「おはようAさん。皆早起きなのね」
「ふふ。大旦那様と葵がデートに行くところなんて珍しそうだから、野次馬だよ♪」
「や、野次馬って…」
私は皆の見世物じゃないわよと言いたげな顔。
残念ながら葵の希望と私たちの興味は一致していないのだから、諦めてもらうしかないね。
「流石は我が天神屋の灯守。わかっているね」
いや、大旦那様はそのドヤ顔をどうにかしてほしい。
気持ちはわからなくもないから言わないけれど。
「葵。山の天気は変わりやすいって言うし、暖かくしていくんだよ？」
「ありがとう。お土産に美味しい果物をとってきてご馳走するわね！」
「ええ、楽しみにしているよ」
こうして、大旦那様と葵は百目山へと向かう宙船で旅立っていった。
・
軽量の宙船がぐんぐんと小さくなり見えなくなった頃、天神屋にはもう一つ宙船が停泊した。
こちらも小型で、降りてくる者はいない。
これは私用に用意されたものだ。
「行ったね…。じゃ、私も向かうとするよ」
葵に気を遣われてもと思い、隠しておいた小さな荷物を物陰から引っ張り出す。
「今回はどちらまで行かれるのです？」
若旦那を賜るだけあって、私のこっそり出張のノリも銀次には慣れたものである。
「まずは朱門山の松葉様のところ。そのあとは銀次、あんたの古巣だよ」
「折尾屋へ？」
「先日の儀式で葵くんの活躍を踏まえた請求書が仕上がったのでな。A、コレを」
はてなを浮かべる銀次に白夜が付け加え、私には封書が差し出される。
「はいよ。
…中身、相当吹っかけてないだろうね？
文句言われるのは私なんだよ？」
折角葵が作った繋がりを反故にはしないだろうが、白夜の金勘定に基本慈悲は無い。
「それもまた営業の務めだ」
「鬼畜眼鏡」
「何か言ったか？」
「べつにー？」
渡された封書を大事に荷物に入れ、宙船の階段に足をかける。
「葵には、お土産の鮮度が間に合う程度には戻ってくるって伝えといてくれるかい？」
「承知しました。お気をつけて」
持つものを持ち、伝えるべきを伝え、私も一路目的地へと旅立った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 127人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こんこんきつね(プロフ) - コメント失礼します！この作品好きすぎてめちゃめちゃ感激しました!!私は白夜が好きなのですが、もうほんとに幸せな気持ちで読んでいました！これからも更新楽しみにお待ちしています！ (9月11日 5時) (
レス) @page16 id: e681425de6 (このIDを非表示/違反報告)
そーめん(プロフ) - 奥山乃愛さん» コメントいただきありがとうございます！私の好みの問題でお相手はこっそり用意してあるのですが、一人を除いてみんなに慕われているお姉さんという立ち位置は崩さずに今後も進めていきたいと思っております。体調にもお気遣いいただきありがとうございます(*ﾉωﾉ) (7月18日 15時) (レス) id: 037a4c99bb (このIDを非表示/違反報告)
奥山乃愛(プロフ) - 初コメ失礼します！出来たら全員のキャラに愛されたいです！（恋愛的に）あと落ちは出来れば全員落ちみたいなのが見てみたいです！無理せずに頑張ってくださいね！ (2023年1月2日 14時) (レス) id: fdc1778b4b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：そーめん | 作成日時：2020年12月31日 3時
