◆88青行燈の恩人(過去編) ページ15
墓地を管理している寺の境内、その大きな木の前で列が止まる。
先頭に立っていた青田坊が、ふと、後ろで見守っていた私の方に表情の無い顔を向けてくる。
『お前もくるか?』
「………え?」
まさかそんなことを言われるとはつゆほどにも思っていなかったので、思わず声が出た。
ただ墓地を散歩していただけなのに。
その散歩自体、ただ静かな場所を求めてのこと。
こんなふうに、誰かに誘われるという行為自体…よくわからない。
誘われて困惑してしまった私を、青田坊は責めもせずに瞳のない顔でじっとこちらを見ている。
思えば、ふらついているところを見つけられた時点で、何かを悟られていたのかもしれない。
「あやかしも仲間とつるみたがるんだから、こっちとあまり変わりないところなんじゃないの?」
我ながら、擦れた返しをしてしまったと思う。
普通に「どんなところ?」と聞けばいいのに。
どのみち、そこしか興味がないくせに…。
『…』
案の定、青田坊は黙ってしまった。
気まずい空気というのもこの時初めて学んだので、この時の居たたまれなさといったら、言い表しようがない。
というか、居たたまれなさすぎて…実はよく覚えていない。
人の世は、人の感情で世界が動いている。
あやかしの一生よりも、人の一生の方が早くて、重い。
反して、あやかしの居場所というものは、自然と人目から離れた場所にあった。
彼らもまた、あやかし同志で生きていることが多い。
あやかしの世界があるということに、漠然とした驚きや関心はあったが、
この時の私は少し…人にもあやかしにも疲れていた。
どうせ、同胞にすら疎まれるのだから。
どこにいたって一緒じゃないか、と。
◆89青行燈の恩人(過去編)→←◆87青行燈の恩人(過去編)
127人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こんこんきつね(プロフ) - コメント失礼します!この作品好きすぎてめちゃめちゃ感激しました!!私は白夜が好きなのですが、もうほんとに幸せな気持ちで読んでいました!これからも更新楽しみにお待ちしています! (9月11日 5時) (レス) @page16 id: e681425de6 (このIDを非表示/違反報告)
そーめん(プロフ) - 奥山乃愛さん» コメントいただきありがとうございます!私の好みの問題でお相手はこっそり用意してあるのですが、一人を除いてみんなに慕われているお姉さんという立ち位置は崩さずに今後も進めていきたいと思っております。体調にもお気遣いいただきありがとうございます(*ノωノ) (7月18日 15時) (レス) id: 037a4c99bb (このIDを非表示/違反報告)
奥山乃愛(プロフ) - 初コメ失礼します!出来たら全員のキャラに愛されたいです!(恋愛的に)あと落ちは出来れば全員落ちみたいなのが見てみたいです!無理せずに頑張ってくださいね! (2023年1月2日 14時) (レス) id: fdc1778b4b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:そーめん | 作成日時:2020年12月31日 3時