◆63（葵視点） ページ22
(葵視点)
「すごい…これ全部Aさんが一人で？」
「勿論、資料集めなんかは銀次や大旦那様にも幾らか都合してもらっているよ」
「でもこの量…資料を集めるのも大変なのに、更に比較してる…」
「使う使わないは別として、常に流行を把握しておくべきだってのが白夜の方針でね」
「いやいや！これ使わない手はないわよ！！？
というかむしろ私が教本として欲しいくらい！！！」
「…げ、現世出身の葵にそう言ってもらえるんなら、私も面目が立つというものだよ…」
いけない、料理の話になるとつい…
でも、これにはそれだけの間違いない価値がある。
ここで暮らしつつ小料理屋をやっている私にとってはまさにお宝。
ただ、褒めちぎる私にも気がかりなことが一つ…
「この報告書、すごくよくできてるしわかりやすい。
けど…試作品は作ってないの？」
写真付きなんて贅沢は勿論言わないけど、この報告書には試作品を作ったものがほとんどない。
それを指摘すると、「あー…」と唸る灯音さんの声が聞こえた。
「普通の料理ならともかく、あたしは菓子作りはあまりやったことなくてね…。
かといって、新しいものは板前長達の協力が得られない」
なるほど。板前長は天神屋の味に誇りを持ってる。
天神懐石を食べてしまった今、強く頼めない気持ちはなんとなくわかる気がする。
「それに一番は、試作に関しては白夜から予算が降りない事だね。
私の腕じゃ、お店に出せるまでにどれだけかかるか…」
確かに。白夜さんを納得させるためには実績が必要。
私も夕がおを始める前は白夜さんに認めてもらうのが大変だった。
「あとはそう…隠世で手に入りにくかったり、代用品になるものが突き止められていなかったり。
調べきるにはなかなか限界があるのさ」
せめて材料の名前くらいは全部突き止めておきたいんだけど、とため息をついて長いまつ毛が下がる。
材料名の後ろに「？」がついているものは沢山ある。
隠世もある程度現代の料理が流れてきているとはいえ、海外の商品はまだまだ親しみが無いでしょうしね。
それに、材料を特定できても仕入れできなくちゃ商品化もできない。
以前、縫ノ陰ご夫妻の結婚記念日のために訪れた異界珍味市は期間限定の市だった。
例え目的の物を仕入れられても、隠世で大々的に商売はできないし、仕入れの量には限りがある。
Aさんはその辺の事情についてもわかったうえでやれることに徹してるのね。
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猫築かなめ - とても楽しく読ませていただきました、夢主が大旦那様の元婚約者だったというところを詳しく知りたいです (2020年8月10日 11時) (
レス) id: 8f5697df22 (このIDを非表示/違反報告)
こしあんのお餅 - すごく面白かったです！ (2019年6月2日 17時) (レス) id: 436e739fd5 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - 夢主さんが大旦那様の元婚約者だったとは・・・！驚きました！私、こういうシリアスな感じの小説すっごく好きなんです！たとえ、作者様が自己満足でも私はとても楽しみにしています。気が向いたらで本当に結構です。大変だと思いますが更新頑張って下さい！ (2019年3月7日 23時) (レス) id: 8f1f373125 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そーめん | 作成日時：2018年11月22日 0時
