天神屋の灯守 二

◆62（葵視点） ページ21

(葵視点)

「報告書って、どんなことを書いてるの？」

「ん？私の仕事のことかい？」


見舞いの件はどこへやら。

Aさんに淹れてもらった緑茶と持ってきた梨を堪能しながら、私はそっと聞いてみた。


「あ、勿論差し障りない部分までで！」

「んー、そうさねぇ…
今やってるのは、この半年現世にいた間に食べた料理・流行なんかを詳しくまとめているんだよ」

「へぇ…」

「これが結構な量でね。
覚書はしてあるんだけど、後追いの資料を探したりと時間がかかってるのさ」


私はそっと、その報告書らしい和綴本の山に目を向ける。

私がいない半年の間、現世の料理には何か変化はあったのかしら…


「ふふっ、気になるかい？」


私の視線に気づいたらしいAさんがそう問うてくる。

否と意地を張る必要も無いので頷くと、その和綴じ本の一冊を私に渡してくれた。


「いいよ、見ても。こっちの山はもう終わってるやつだからね」

「えっ、いいの！？」

「むしろ現世出身から見ての意見を色々と聞きたいね」


報告書の内容が良くなる事については白夜も文句は言わないから、というのはAさんの言葉。


「じゃ、じゃあ…お言葉に甘えて…」


ごくりと唾を飲み込み、内容に目を通す。


「！これ…っ」


数ページめくってみて、その内容に驚愕した。

そこに書かれていたのは現世の料理の研究と、更には隠世の料理との比較。

まず現世で流行っている料理とそれに使われる大体の材料や簡単な調理過程が書かれ、
更にそれを隠世に存在している素材で補えるかの考察が述べられている。


「(それを半年分…)」


いくらあやかしが人間みたいに毎食ごはんを食べる必要がないとはいえ、
この量を一つ一つ調べていくのは相当大変な作業のはずだ。

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