◆未回収:修理現場 ページ15
雨は止んでも、盛大にぬかるんでいる地面に足を取られないよう気をつける。
提灯で足元を照らしながらのここは、天神屋の裏手。
このあたりは見所などは作っておらず、一般のお客はまず通さない。
本館付近は流石に植木で上手く隠されているが、地面を這うようにいくつかのパイプが走っている。
それを辿った目的地は、渓谷の縁。
底の見えぬ渓谷を覗き込むと、少し下でトンカンと軽快な音が聞こえる。
「現場はあそこだね」
谷に沿って作られた階段を降りていけば、パイプが崖を伝った場所へとたどり着く。
軽快な音を鳴らしているのは普段天地下で作業を担当している鉃鼠達の工具によるもの。
姿は見えないが、鎌鼬の誰かも護衛として見回りをしているはずである。
作業している鉃鼠の横には、明かり役なのか、提灯を持った者が一人。
その人物がこちらの気配に気付いて顔を上げる。
「あ!A様?」
「千秋…見ないと思ったらここにいたんだね」
「現場(ここ)で入れ替わる皆に事情の説明と報告をしてたら、戻るに戻れなくなりまして」
そう言って、千秋はへらりと笑う。
「なるほどねぇ」
手間で悪いとは思ったものの、まずは作業状況の確認を行う。
停電の原因はこのあたりのケーブルと、妖火に地下から霊力を供給するための配管の損傷だった。
どちらも雷獣の雷の直撃を受けていたという。
作業している鉃鼠に聞くと、「配管は今修理し終わったでチュ。でもケーブルは夜通しでやり直しでチュから、明日にならないと回復しないでチュ」とのこと。
「帰ってきて早々の残業決定だねぇ」
「お疲れ様でっす」
肩を落とした私に、千秋がそっと労いと同情の顔を向けていた。
fin.
−−−
長らくご無沙汰をいたしました!
不在の間、気に入っていただいた皆様に大変感謝申し上げます!m(_ _)m
◆未回収:天地下ボイラー室 ※オリジナル名の妖怪出ます→←◆未回収:天地下
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猫築かなめ - とても楽しく読ませていただきました、夢主が大旦那様の元婚約者だったというところを詳しく知りたいです (2020年8月10日 11時) (レス) id: 8f5697df22 (このIDを非表示/違反報告)
こしあんのお餅 - すごく面白かったです! (2019年6月2日 17時) (レス) id: 436e739fd5 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - 夢主さんが大旦那様の元婚約者だったとは・・・!驚きました!私、こういうシリアスな感じの小説すっごく好きなんです!たとえ、作者様が自己満足でも私はとても楽しみにしています。気が向いたらで本当に結構です。大変だと思いますが更新頑張って下さい! (2019年3月7日 23時) (レス) id: 8f1f373125 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そーめん | 作成日時:2018年11月22日 0時