◆未回収:天地下 ページ14
「あれれ…Aちゃんの幻覚が見える」
「正真正銘私だよ、砂楽さん」
「あれ〜、本物だった」
仮眠を取っていた砂楽博士を揺り起こすと、眼鏡をかけていない目で寝ぼけたことを言う。
そんな彼に、側に転がっていた愛用の黒メガネを差し出す。
「相変わらずずっと篭ってるのかい?」
「そりゃあ僕は土竜だからねぇ。
ところで、Aちゃんが居るってことは、出張とやらは終わったの?」
「勿論」と返してから、私は彼に改めて相談があるのだと告げる。
もそもそと起きて白衣を纏った通常スタイルになったのを見計らい、
私は相談に来た風呂場の提灯について話し始めた。
「灯篭風呂は確かに趣きがあるねぇ。
それで、紙の強度ってわけかい?」
「えぇ。できれば防水だけど軽くて、光を通しやすい素材がいいのだけど…」
「防水、軽い、明るい。白夜並の難題を吹っかけてくるねぇ」
なんだか含みのある言い方だけど、否定はされないのでやってはくれるのだろう。
非常用の品だから数は一通り揃えれば問題ない。
「じゃあ、必要経費についてはAちゃんが交渉してね」
「えぇ、よろしく頼むわね」
やれやれ、また白夜絡みの課題が増えた。
大旦那様からの休暇は、本当に身体を労るだけになりそうだ、とそんな愚痴を零せば。
「Aちゃんのそれは、もう病気みたいなものだよねぇ」とからりと笑って茶化されてしまった。
fin.
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猫築かなめ - とても楽しく読ませていただきました、夢主が大旦那様の元婚約者だったというところを詳しく知りたいです (2020年8月10日 11時) (レス) id: 8f5697df22 (このIDを非表示/違反報告)
こしあんのお餅 - すごく面白かったです! (2019年6月2日 17時) (レス) id: 436e739fd5 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - 夢主さんが大旦那様の元婚約者だったとは・・・!驚きました!私、こういうシリアスな感じの小説すっごく好きなんです!たとえ、作者様が自己満足でも私はとても楽しみにしています。気が向いたらで本当に結構です。大変だと思いますが更新頑張って下さい! (2019年3月7日 23時) (レス) id: 8f1f373125 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そーめん | 作成日時:2018年11月22日 0時