◆67(前半葵視点) ページ26
(前半葵視点)
Aさんの食べっぷりを見ながら、私は今夜のメニューの手応えを感じていた。
鮭のムニエル。報告書の最初にあった何気ないメニュー。
和食なのに確かな洋を感じさせる、どこか懐かしい食卓の一品。
ともすれば忘れそうなそれに惹かれ、材料が揃っているのも手伝って本日のメニューに抜擢してみた。
灯音さんにとっても思い出の料理なのかとも感じいていたし。
「(最初って特別よね)」
そう思って話を振ってみた。
でも。
″大旦那様と現世デート″
食事時で胃も温まっていたせいだろうか…
出てきたその発言に、思わず手が止まった。
私の異変にすぐ気がついたAさんが私の顔を見て数瞬の後…
まずい
表情から読み取れたその感情に、自分の胸がずしりと重くなるような感覚を覚えた。
・
「(しまった!!)」
自分の失言を理解するも、時すでに遅し。
葵のご飯で気が抜けていたとはいえ、自分のうかつさにめまいを起こしそうになる。
「あ、葵…い、今のはその…」
「Aさんは…、」
「「…」」
お互い言いかけてやめると、必然的に沈黙が降りる。
そのまま見つめ合い、なんと言葉をかけていいかわからなくなる。
せめて途中まで言いかけていた言葉を続けてくれれば…
明らかに動揺している瞳の揺れは未だ収まらず、体もピクリとも動かない。
妙な緊張に支配され、お互いすっかり口火を切る機会を失っていると…
「葵しゃん〜きゅうりくださいでしゅ〜」
沈黙を破るゆるキャラの声がした。
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猫築かなめ - とても楽しく読ませていただきました、夢主が大旦那様の元婚約者だったというところを詳しく知りたいです (2020年8月10日 11時) (レス) id: 8f5697df22 (このIDを非表示/違反報告)
こしあんのお餅 - すごく面白かったです! (2019年6月2日 17時) (レス) id: 436e739fd5 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - 夢主さんが大旦那様の元婚約者だったとは・・・!驚きました!私、こういうシリアスな感じの小説すっごく好きなんです!たとえ、作者様が自己満足でも私はとても楽しみにしています。気が向いたらで本当に結構です。大変だと思いますが更新頑張って下さい! (2019年3月7日 23時) (レス) id: 8f1f373125 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そーめん | 作成日時:2018年11月22日 0時