◆41 (葵視点) ページ42
(葵視点)
後片付けが終わったのを見計らい、Aさんが立ち上がる。
体力と霊力がないと言っていたけれど、今は足元もしっかりしているみたい。
「ご馳走様。
だいぶ霊力も回復したし、そろそろ私も仕事に戻らないとねぇ」
時刻は亥の刻にさしかかる頃。
妖たちにとって夜はまだまだこれからだけど、
灯音さんが来てから随分と長い時間が経っている。
「あんまり長居すると、痺れを切らした白夜が仕事しろってすっ飛んできそうだよ」
「あの扇子だけどこからか飛んで来るかもしれませんね」
「銀次さん。それ、すごくありそうだから怖いわ…」
ぶるりと肩を震わせる私を見て、二人も満更ではないのか苦笑いを返す。
話が途切れたところで、Aさんはカウンターにずっと置かれたままだった提灯をその手に持った。
青い灯を宿す蓮の花の形をした手提げ提灯。
それを持ったAさんの佇まいに、なんだか妙に納得してしまう。
多分だけど、これが完成された彼女の通常スタイルなのね…。
そのまま、Aさんは一旦夕がおの外に出ていく。
お見送りしなくちゃと、私もその後を追った。
・
雷雨が去った空には、星や宙船がよく見える。
それもそのはず。
本館は未だ外の提灯が全て消え、敷地全体がいつもの半分以下まで暗く、
館内の灯りだけが漏れている。
それだけでもちょっとは明るいけれど、いつも沢山の灯りに囲まれている天神屋の印象があるから、
今夜はどこかひっそりとしているように見える。
でも、そんなのは隠世一と言われたこのお宿には似つかわしくない。
Aさんは、静かに本館の様子を見ていた。
その隣に、銀次さんがそっと並ぶ。
「鬼火たち、すっかり怯えて出てこないようですね…」
「あぁ。あの子らは雷獣の雷が大嫌いだからねぇ。
それなのに御本人様が登場なさったらもう…ね。
おそらく明日の夜までは地下に籠もって出てこないだろうさ」
言って、Aさんは手に持った提灯を一度地面に置いた。
「さぁ。仕事の時間だ」
ラッキー方角
西 - この方角に福があるはずです
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レモン(プロフ) - そーめんさん» これからも楽しみにしてます (2018年12月29日 22時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
そーめん(プロフ) - レモンさん» コメントで教えていただきありがとうございます!全然気づけてなかったので私もビビりました;ありがとうございました!今後もがんばります! (2018年12月29日 22時) (レス) id: 6f68bed6a4 (このIDを非表示/違反報告)
レモン(プロフ) - とっても面白いです! (2018年12月29日 20時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
レモン(プロフ) - はじめまして一話で中井とありますが中居ではないでしょうか? (2018年12月29日 20時) (レス) id: e66d7d83c8 (このIDを非表示/違反報告)
そーめん(プロフ) - 碧海さん» コメントありがとうございます!キャラの口調は私も大事にしている点のひとつなので、そう言っていただけてとても嬉しいです!!これからもコツコツがんばります!! (2018年11月11日 18時) (レス) id: 6f68bed6a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そーめん | 作成日時:2018年10月17日 0時