歳。 ページ10
「太刀川さんよく来るの、ここ？」
「いや、初めて」
たまにテレビの街中特番で取り上げられてる三門ショッピングモール。高層ビル以上の高さで、中にはたくさんの人が買い物をしてる。
「別のとこにするか」
「ううん、ここでいいよ」
「楽しいかここ？」
「太刀川さんが連れてきたんじゃん」
「そうだな」そう笑って手を引く太刀川さん。すれ違うのはほとんど家族連れ。
その姿を見る耽美に胸がズキリと痛む。けど気づかないふりをした。
適当にエスカレーターで14階に行けばあったのはブランドショップ。高級な服やバッグ、鞄、たくさん取り揃えられてる。
そこに足を運ぶ若者もいれば、仲の良い夫婦もいる。
「すげぇなこれ」
太刀川さんが見てるものを横から覗き込む。
「え、ほしいの？」
厳重なガラスケースに入ってる小さな指輪。いくつもならんでて値段がそれぞれ違う。
私がそう訊ねると「あー」と少し宙を見て、それから後ろ髪をがしがしかいて口を開いた。
「いつかお前にやりてぇな、これ」
「は？」
そんな間抜けな声を出し、そしてその意味を理解する。
「いや……いやいやまだ先でしょその話し」
ガラスケースに写ってる自分が慌てた様子を見せた。私たちのいる店に落ち着くほどのクラシックが流れる。
「つーかお前結婚できる歳だよな」
「やめて、それ以上言わないで。言いつけてやる忍田さんに」
「なんでそうなるんだよ」
顔から一気に笑顔を無くした太刀川さんは、はぁと盛大にため息をついてそれから「他のとこ行くか」と大袈裟にテンション下げてそう言った。
忍田さんの名前を出せば大概のことはやり越せる、そう出水が言ってたことを思い出す。名前一つでここまで変わるのは、それほどまでに太刀川さんにとって忍田さんは大きな存在だからだと思う。
「……そういう話しはまた今度ね」
そっと隣の太刀川さんの手を握ってそう言う。
「そうだな」
「飯食いに行こうぜ」と気を取り直した太刀川さんはエレベーターに向かって歩きだす。
「結婚」とかそういうの頭の中には無かったし、第一私には無縁だと思ってた。
そんな未来想像できないし、したこともなかった。
だからその話しをされたとき、正直気持ちがついていけなかった。嬉しかったから。
あぁ顔が熱い。今振り返られたら困る。
エレベーターにつくまで、顔が見られない程度に伏せていた。
◇
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柳スウ - 太刀川さんの小さな気遣いカッコいい。 (2016年7月13日 16時) (
レス) id: 4dc969e182 (このIDを非表示/違反報告)
日菜(プロフ) - 前まで出水くんが一番好きだったのにこれを読んでから太刀川さんが好きになった……凄いいい話…･゜･(｡´ﾉω･`)。ｳｳｩｩ (2016年5月3日 20時) (レス) id: 65293e9234 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：§KAYA§ | 作成日時：2016年5月3日 19時
