一面。 ページ7
Aside
「蓮さんに掛け合ってやろーか？」
宇佐美の隣にいる米屋が口を開いた。
「いいねー」と宇佐美が笑みを浮かべて米屋から私に視線を戻す。
「化粧したところでどうせ最後は落とすんだから。
可愛くしても落としたらせっかくした可愛さもなくなるんだし」
「するだけ無駄」そう締めて前方に視線を向けた。するとバシッと右手を掴まれる。
「なに言ってんの！」
宇佐美の突然の行動に私たちはぎょっと驚く。
「それでも、太刀川さんには滅多に見せられないAちゃんの姿見せてあげないと！」
「宇佐美落ち着い、」
「新しい一面見れたらきっと喜ぶよ太刀川さん」
私の声を遮ってそう言い、強く握ってた手を離す宇佐美。
「おまじないみたいなもんなんだよ？お互いが楽しくなれる」
眉を下げて私を見る宇佐美は少し伏せ目気味になってふぅと息を吐いた。
私の新しい一面って……
そんなの見てあの人は喜ぶんだろうか。
だけど、その日は楽しく過ごしたい、ちゃんと成功させたいから。
「……わかった」
ぱあっと一気に明るくなる宇佐美を見て、気づかれないほどの小さなため息をついた。
「うん！じゃ、あとは陽介に任せた」
「えっ俺かよ」
苦笑いを浮かべる米屋の肩に手を置く宇佐美は私を見て口を開いた。
「どうなったか報告してね！」
興味津々に言う宇佐美にうぐっと言葉を詰まらせる。
「あ、私支部に行かなきゃならないから」
別れ道で片方の道を指差した宇佐美はそう言った。
「今日のお前すげぇ押しに弱かったな」
先に一人で道を進む宇佐美の背中を二人で眺める。
「言ってること正論だなって思っただけ」
「お前知らねぇこと多すぎ、以外と」
「それは米屋だって同じでしょ」
「如月よりかは上だと思うけどなー」
宇佐美のあとを追うように歩き出す米屋。
「じゃぁねAちゃん。
ほら、陽介早くー」
「おーう。そんじゃ頑張れよ」
手を振る二人を見送り、別の道を進む。
なんでここまでしてくれるんだろ。所詮は他人の恋愛なのに、どうして親身に協力してくれるんだろうか。
道に映る私一人の影。夏は暗くなるのが遅いため、今頃オレンジに染まり始めている。
それに加え蝉の鳴き声もするから、暑苦しさが倍に感じた。
◇
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柳スウ - 太刀川さんの小さな気遣いカッコいい。 (2016年7月13日 16時) (
レス) id: 4dc969e182 (このIDを非表示/違反報告)
日菜(プロフ) - 前まで出水くんが一番好きだったのにこれを読んでから太刀川さんが好きになった……凄いいい話…･゜･(｡´ﾉω･`)。ｳｳｩｩ (2016年5月3日 20時) (レス) id: 65293e9234 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：§KAYA§ | 作成日時：2016年5月3日 19時
